≪「お金より他の人を助けて」≫
数年前にこんなことがあった。エンジン付きのゴムボートを運転していたときのこと。大海の真ん中で突然エンジンが止まってしまった。無線で沿岸警備隊に連絡をするも、電波の状態が悪くらちがあかない。しばらく交信を試みていると、遠くから白い船が近づいてきた。
無線を聞いていたという年配の夫婦が助けにきてくれたのだ。彼らは船から伸ばしたロープで僕のゴムボートを引き、僕がキャンプをしていた無人島まで連れて行ってくれた。
その後キャンプをたたむまで数時間を待ってくれ、さらにはキャンプ道具を船に積み込んで町まで送ってくれたのだ。
僕のためにほぼ一日を費やしてくれた。かかったガソリン代も少なくはない。もったいないほどの親切を受けた僕は、言葉や態度だけでは気持ちを伝えきれないと、いくらかのお礼を渡そうとした。ただ彼らは頑として受け取ってくれない。そしてこう言ったのだ。