ルネ・マグリット「白紙委任状」(1965年、81.3x65.1cm、油彩/カンヴァス_ワシントン・ナショナル・ギャラリー、提供写真)。National_Gallery_of_Art,Washington,Collection_of_Mr.and_Mrs.Paul_Mellon,1985.64.24。(C)Charly_Herscovici/ADAGP,Paris,2015【拡大】
【アートクルーズ】
たくさんの山高帽の紳士が、青空に浮かんでいる-。そんなルネ・マグリット(1898~1967年)の絵画は、驚きだけでなく、詩情もあふれている。現代美術に今も影響を与え続ける「シュールレアリスムの魔術師」。その13年ぶりとなる大型回顧展(東京・国立新美術館)が開かれている。イメージの操作によって生み出された、あり得なくも美しい風景に入り込んで、どこまでも彷徨(さまよ)ってみたい。
マグリットも自身の絵について「詩として味わってほしい」と語っていた。題名一つとっても、そうした姿勢が表れている。「赤いモデル」「白紙委任状」「一夜の博物館」…。描いている中身とは関係がないような表現ばかりだ。文学では、日ごろ結びつかないような異質な言葉がぶつかると「詩」が生まれる。マグリットの題名は作品を説明せず、むしろ作品とぶつかりながら、不思議な“化学反応”さえ起こしている。