セスナに差し込む日光が頬に心地いい。冬のそれと明らかに違うのは光に熱を感じることだ。眼下では荒涼としたブルックス山脈を覆う残雪が日差しを浴び、まぶしい輝きを所々で放っている。
隣で操縦桿(かん)を握るカークとはもう8年の付き合いになる。春になると彼とこうして北極圏の最北端へ旅に出るのが恒例となっている。
ブッシュパイロット-。標識ひとつないこの広大な土地の地理や天候を読み解き、小型機ひとつで駆け回る彼のような腕利きを、アラスカではこう称している。
冬のマッキンリー山麓での出来事や日本の政治経済、今シーズンの撮影予定など、毎年同じような会話をしながらも、それが単なる時間つぶしではなく、旧交を温め合うひとときであることがうれしい。仕事上の付き合いだけでは終わらないのが、アラスカに集う人々の多くがもつ特徴である。そんな彼らの存在は、僕がこの地にひかれてやまない大きな要因のひとつである。