≪極北の空気を吸い込みカメラを構えた≫
「ドールシープだ」とヘッドホン越しにカークの声。とっさに彼の目線の先を見渡すが、それらしいものは何も見えない。
「あの尖った頂からまっすぐ下に降りたところだよ」と言われてやっと見えてきたのは、米粒ほどの白い点だ。自分だけでは絶対にそれがシープだとは分からなかっただろう。
探しているものが実際にどんな風に見えるのか、それさえ分かっていれば小さくとも見つけだすことができる。海上はるか遠くでホコリのように立ち昇るクジラの潮を、僕が難なく見分けられるのと同じなのかもしれない。
「カリブーだ」。またカークが叫ぶ。さっきよりも声が弾んでいるのは、カリブーを待ち望んでいた僕の気持ちを忖度(そんたく)してくれているからに他ならない。