【KEY BOOK】「日本の色を染める」(吉岡幸雄著/岩波新書、842円)
吉岡さんはたんに古代色や王朝色を再現してきただけではない。そのための植物を選別し、技法を開発し、その意味を問い、文献に当たり、そのすべての解説を引き受けた。源氏五十四帖のすべてに挑んだのがその結実だ。なぜそこまで徹底できるのか。本書は吉岡さんの意志と意図と意表を説明し、それらが「日本の意匠」の根幹をつくってきたことを証している。観読すべき一冊。
【KEY BOOK】「日本の色の十二カ月」(吉岡幸雄著/紫紅社、2484円)
水上勉の序文は、吉岡さんが「昔のことは敬虔に守って今を働くという立場」を貫いていることを、大いに称賛していた。本書では冬は紅花を、春から夏にかけては藍を、秋は苅安や茜を染め上げていく「よしおか」の四季折々の挑戦が、風物と歴史をまじえて語られる。それでもその仕事は完成は見ない。たとえば飛鳥天平の「赤」はいまだ永遠の謎なのだ。