南北戦争前に建設が始まったプランテーション・ハウス「ロングウッド」は、開戦とともに職人が北部に帰ってしまったため2階より上層階はいまも未完のままだ=2015年3月19日、米ミシシッピ州ナッチェス(川口良介撮影)【拡大】
18世紀末から19世紀初頭、ミシシッピ川に沿って、サトウキビや綿花などを栽培したプランテーション(大農園)の経営者たちはこぞって豪邸を建設した。広大な農園の中に点在するぜいたくなヨーロッパ風の建造物は、華やかな富裕層の暮らしと、それを支えた黒人奴隷の過酷な生活の両面を持っていた。
1861年、米国を二分した南北戦争が火蓋を切った。自由貿易と黒人奴隷の労働力を求める南部。他国の製品に関税をかける保護貿易と奴隷制度廃止を求める北部。経済、思想の両面での対立が要因となった。4年後、北部のアメリカ合衆国が戦況を優位に進め、戦争は終結。「南部同盟」も「奴隷制度」も終わりを告げ、栄華を極めた豪邸の多くは北軍により破壊、または放置され消失していった。現在では、破壊を免れた一部が「プランテーション・ハウス」として修復され、当時の暮らしを伝えている。
ミシシッピ州ナッチェスの「ロングウッド」は、八角形の外観がユニークなプランテーション・ハウス。綿花で栄えた農園主が1859年に建設を計画、60年に着工した。作業は急ピッチで進められたが、南北戦争の開始とともに建築資材の搬入が滞り、優秀な職人たちも北部に逃げ帰ってしまった。工事が途中で中断された上層階の内装は、柱など骨組みがむき出しのまま。今でも吹き抜けの状態だ。