現在、旧市街フレンチ・クオーターのバーボン・ストリートや、フレンチメン・ストリートでは、次代のサッチモを夢見るミュージシャンが、バーやライブハウスで夜ごと腕を競い合っている。路地裏まで響くその音楽は、夜明け前まで鳴りやむことはない。
≪人生の浮き沈み表現…生き方そのものなんだ≫
「その十字路で彼は悪魔に魂を売り渡し、引き換えに演奏技術を手に入れた」。ギター1本でアメリカ大陸を渡り歩き、その演奏が巧みなことに驚いた観客が作り出したブルースミュージシャン、ロバート・ジョンソン(1911~38年)にまつわる「クロスロード伝説」である。
19世紀初頭、奴隷制度が残る南部の大農園。黒人奴隷たちは過酷な労働を強いられる中、さまざまな形で自分たちの音楽を紡いでいた。身近な出来事や感情を表現し、日常の幸せや憂鬱を歌詞に「労働歌」として歌われていたものが、1862年の奴隷解放宣言以降「ブルース」として広く世界に知られていくこととなる。
ミシシッピ川流域で生まれたブルースが、商業的に花開いたテネシー州メンフィス。そのメンフィスとミシシッピ州を結んでいるのが国道61号。ブルースとの関わりが深い町が点在するブルースハイウエーともいわれ、国道49号と交わる十字路こそが冒頭に登場したそれである。