その十字路がある街、ミシシッピ州クラークスデール。世界中のブルースファンが憧れるこの街に、83歳のブルースミュージシャン、リオ“バド”ウェルチはいた。13歳のとき初めてギターを手にし、15歳で初めて人前で演奏する機会を得る。しかし林業で生計を立て、仲間内でのみ演奏していた彼のデビューは遅く、初めてCDを発売したのは昨年1月、82歳の誕生日を迎える直前だった。
「私にとってブルースは人生の浮き沈みを表現する手段。君たちが言うような単なる音楽ジャンルではなく、生き方そのものなんだ」と話す。記者がクラークスデールを訪れた3月20日、偶然にも彼の誕生日ライブが街の小さなライブハウスで開かれていた。時計は間もなく午後11時。腰を曲げて椅子に座り、出番を待つその姿は哀愁漂うおじいちゃんそのもの。しかしピンク色のド派手なギターを手にすると、その姿は一変した。ベアハンドで弦をかき鳴らし、しゃがれた歌声を張り上げる。観客をあおるように力強く足でリズムを刻むと、一人また一人と観客が踊りだした。