あなたはアメリカ南部の料理と聞いて何を思い浮かべるだろうか。ジャンバラヤ? ガンボスープ? はたまたキャットフィッシュ(ナマズ)やアリゲーター(ワニ)、クロウフィッシュ(ザリガニ)などの日本人には珍しい食材?
「南部の食文化を一言で語ることは難しい。まずは歴史を知ることが重要だよ」-。ミシシッピ州ナッチェスのケビン・カービー観光局長がこう話すように、アメリカ南部が共有する「Southern hospitality」と呼ばれる独自の文化や生活習慣は、複雑な歴史的背景から形成されている。そこから生まれた食文化は、アメリカだけではなく、世界のどこにもみられない、独自でバラエティーに富んだ世界だ。
植民地時代、フランスやスペインなどヨーロッパに起源を持つ支配者階級が生んだクレオール料理。カナダ東部、アケーディア地方からやってきた移民たちが生んだケイジャン料理。そこに労働力としてアフリカから海を渡ってきた黒人奴隷たちが、現在主食として多用される米やコーン、豆などの作物と、その調理法をもたらした。