美術家の小森はるかと瀬尾夏美による本展「あたらしい地面/地底のうたを聴く」が取り上げるのは、あの震災でも、もっとも過酷な津波被害を受けた岩手県陸前高田市(以下、陸前高田)の現在である。
陸前高田は、市街地のほぼ大半が、津波でごっそり失われた。やがて、山のように折り重なった被災物が片付けられると、そこには、見たこともない平地が広がっていた。なにも知らずにこの地を訪れたものには、まっさらな分譲地に見えるかもしれない。が、たとえ家を建て直すのにうってつけに見えても、人々は、そのままではもう土地に戻ることができない。歴史的に見て、大津波は何度でも到来することがわかったからだ。戻るためには、ふたたび大津波が来ても波にさらわれることがないくらい土を盛り、嵩(かさ)上げをして、そのうえで家を建てなければならない。いま、陸前高田はそのための大規模な「土地改良」の真っ最中だ。冒頭で触れたダムで水没する村と違って、陸前高田は、いわば土の底に沈むのである。
手作りの花畑も
そのなかで、人々は2度、古里を喪失する。1度目はもちろん、あの大津波によって。しかし2度目には、古里を取り戻すために現在進行中の、この土地の嵩上げによって。けれども、そうして近い将来、取り戻されるであろう古里は、はたして、かつての古里と同じなのだろうか。