明と暗の対比
そのような事態に直面する人たちの表情と言葉を、小森と瀬尾は、長期にわたり聞き取った会話や、変わりゆく土地のスケッチを添えて、ひとつの明るい部屋と、もうひとつの暗い部屋という対比のなかで見せている。
もしかすると、この2つの部屋の対比は、地上と地中に当たるのかもしれない。タイトルの「あたらしい地面」は、嵩上げされた新たな古里を、「地底のうたを聴く」は、地中に沈むかつての古里をこうして、二重に過去のなかに沈む古里の記憶のなかから、わずかに滲(し)み出し、じわじわとこぼれ出してくる「うた」へと、ふたりは耳を傾ける。やはり近々、土のなかに沈む、古くから何かあれば人々が集ったという素性の知れぬ石倉に、いま皆が、歌と踊りで別れを告げようとしているように。(美術批評家、多摩美術大学教授 椹木野衣(さわらぎ・のい)/SANKEI EXPRESS)