蔡は「架空の島をつくることで、理想の島とは何かを考えたい」と述べたという。「史記」にも登場し、秦の始皇帝が不老不死の薬を求めて徐福(じょふく)を派遣したという三神山の一つ「蓬莱山」に蔡は、島(地域)の永遠の繁栄を託そうというのだろうか。
過疎化や少子化にともなって、地域には廃屋や廃校が多い。
大巻伸嗣の「影向(ようごう)の家」は、廃屋という空間を「装置」にして、“非日常的な時間”を体験させようというインスタレーションだ。影向とは、神仏が一時、姿を現すことを指す。
廃屋の暗い空間に眼を凝らすと、丸い光の玉が昇ってきて、やがて割れ、煙のように消え去る。それは神のようでもあり、人の魂のようでもある。
大巻は自作について、「『神の宿る家』としてつくった。あちら側の世界とつながる場として、じっくり感じてほしい。(光の玉は)豪雪地帯の雪を光に見立て、降ってきた光が天に帰ることもイメージしている」と話した。