現在も7軒の蔵元が残った稀有(けう)なエリアではあるものの、実直に昔からの酒造りを守るだけでは売り上げが保てず、蔵を閉めざるを得ない状況も多いのです。
高山の街をもっと盛り上げ、伝統をつないでいきたい! そんな思いで酒造の再生に取り組んでいるのが有巣さんです。実家はおもてなしの宿として有名な老舗旅館。大学卒業後、家業を継ぐ将来を見据え、東京の経営コンサルティング会社で働いていた有巣さんのもとに、ある日突然実家から電話が。「老舗の蔵元を引き継ぐことになったので、その責任者として戻ってきてくれ!」。今まで全く予期しなかった展開が訪れます。
新しい職場は、江戸末期創業の200年の歴史を刻む伝統ある蔵元。初めて蔵の中でしぼりたての新酒を飲んだ瞬間、その味の奥深さに驚いたそうです。そして、「日本酒についてはほぼ素人、でも、だからこそ伝えられる良さがあるはず」と考えました。日本酒文化を、高山を、世界に向けて発信するまたとないチャンスが訪れたのです。受け継がれてきた酒造りへのこだわりは守りつつ、時代に合わせ変化させ広げていこうという、伝統を守るための革新が始まります。