オリンピックでも世界陸上でも町の運動会でも、大会を代表するヒーローは短距離徒競走の一等賞である。まっすぐ走って誰が一番速いか。これほど見る人を興奮させる競技はない。
2008年北京五輪以降、世界を圧倒し続けたのが、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)だ。巨体を揺らして100メートルを駆け抜ける姿は、あらゆる常識を超越してきた。ロンドン五輪でも王座を脅かすライバルは現れず、走り幅跳びや400メートルへの挑戦も噂された。強すぎるからだ。
今季は違った。左足の故障で出遅れ、シーズン序盤は欠場が続いた。21日には29歳になり、限界説もささやかれていた。
7年ぶりに帰ってきた懐かしい北京鳥の巣スタジアムの世界陸上でも、予選では異様なほどに汗をかいた姿が目立ち、タイムは上がらなかった。23日の準決勝ではスタート直後につまずき、終盤の追い上げでなんとか決勝に進んだものの、9秒96は自身の世界最高9秒58には遠く及ばなかった。