≪プレーで牽引できず 主将・木村の涙≫
木村沙織は泣いていた。
最終戦の中国戦に敗れると、整列を待たずに両手で涙を拭った。円陣を組んで皆に声をかけるのは、主将としての大会最後の役目だったが、涙がこみあげて声にならない。主将の涙は、チームメートに伝染した。顔を上げた多くの選手の顔に、涙があった。
大会中、木村は「このメンバーでできる最後の大会だから」と言い続けた。古賀ら多くの後輩も同じ言葉を口にした。それだけ、仲のいいチームだったのだろう。木村の求心力がそれを支えたのだろう。だが、目標には届かなかった。何よりエースとしての、木村の働きが足りなかった。
ロンドン組3人を残して大幅に若返った新生代表を、主将としてどう束ねるか。
現役高校生として代表入りした末娘のキャラクターはもう通じない。自ら仕えた吉原知子や竹下佳江(よしえ)といったカリスマ主将のまねはできない。結局、誰よりも練習し、皆に声をかけ、木村は木村らしく主将の役目を果たすしかなかった。