一度こう考え出すと止まれなくなるのは、日々東京スカイツリーを目の前にしているからだけではない。現在私がその稽古場で演出している井上ひさしさんの『十一ぴきのネコ』というミュージカルに潜むすさまじい辛辣(しんらつ)さが、まさしくこうした高所に上ろうという人々の欲望を思わせる作品であるからかもわからない。どんなすごい高さ大きさであろうと、青空をバックにくっきりと勇ましく浮かび上がろうと、雲のまにまに神秘的にそびえようと、「高いなあ大きいなあ」と安易に感心してしまわないこと。感心はやがて憧れを生み、私もああいう高所へ一度上ってみたいなあ、いやあこれは気持ちのいい眺めだなあ、いずれは暮らしてみたいなあ、と欲望の象徴は、容易にその身に潜む欲望を誘い、呑(の)み込んでゆく。