102歳で天寿を全うしたライ・サンペラーヤさんの葬列。人生のクライマックスが葬儀であり、葬儀のために生まれ、葬儀のために死ぬのがトラジャ族の文化だ=2015年8月1日、インドネシア・スラウェシ島(今井竜也さん撮影)【拡大】
近年すさまじいスピードで発展を遂げるインドネシア。この大小1万3466の島々からなる島嶼(とうしょ)国家のほぼ中央に位置する第4の島、スラウェシ島には「死ぬために生きる」ともいえる独特の死生観を持った部族が暮らしていると聞き、訪ねてみた。
首都ジャカルタから空路で約2時間、スラウェシ島の玄関口であるマカッサルに着く。目指す山岳部族のトラジャ族が住むタナトラジャは、そこからバスに揺られること7~8時間のところにあった。手を伸ばせば届きそうな雲が透き通った青い空を漂い、乾いた風が黄金色の稲穂を揺らしていた。
インドネシアではほぼ9割をイスラム教徒が占めるが、トラジャ族の場合はキリスト教徒が多数派で、土着の信仰とも結びついて独自の文化を形成している。そして、トラジャ族にとって人生最大のイベントが葬式である。
古くから「葬式にお金をかければかけるほど、死後も幸せになれる」と信じられ、葬式は莫大(ばくだい)な費用をかけて行われる。平均月収が2万円ほどという土地柄で、葬儀費用は1000万円に及ぶことも珍しくなく、資金が集まるまでは何年も葬式を行わないのも一般的風習だ。死後10年以上行われないこともあり、家の前に白い旗が立てられていると、その家には葬式を待つ遺体が安置されていることを示している。