【本の話をしよう】
私は読み狂人。朝から晩まで読んで読んで読みまくった挙げ句、読みに狂いて黄泉の兇刃に倒れたる者。そんな読み狂人が最近読んで改めて感心したのは富岡多恵子の『室生犀星』である。
どんな本かというと題にある通り、詩人そして小説家である室生犀星の評伝なのだけれども、特徴的なのはあくまでも言葉の問題、言葉の側から、その生涯、というか、その文業に迫っているという点である。
世間並みであるための道具
その際、作者がもっとも注目した点は詩と小説の関係で、始めに詩を書いて後に小説を書き始める人はあるが、小説を書き後に詩に移る人はない。なぜか。という疑問を、やはり詩から散文に転じた室生犀星の作品を通して、グングンに考えて書いてあるのが本書である。