干渉を正当化
第3に、イランに対する牽制(けんせい)だ。ロシアが本格的な軍事介入を開始するまでは、シリアのアサド政権に最大の梃子(てこ)入れをしていたのはイランだった。イランはシーア派(12イマーム派)の原理主義国家である。シリアに対する外交攻勢のみならず、イエメンのフーシ派(シーア派)、バハレーンの12イマーム派を支援し、スンニ派に対する対決姿勢を強めている。この勢いが強まると12イマーム派が主流派であるアゼルバイジャンにも影響がある。アゼルバイジャン情勢が不安定になると、国境を接するロシアの北コーカサスに影響を与えることを懸念して、ロシアはイランの勢いを削(そ)ごうとしている。
第4は、キリスト教カードを持ち出して、シリアに対する干渉を正当化することだ。シリアの総人口の10%がキリスト教徒だ。ISはもとよりイランの完全な影響下にシリアが入ると、シリアのキリスト教徒が弾圧されることは必至だ。中東に在住する東方キリスト教徒を比護(ひご)するという理由ならば、ロシア国内で、シリアに軍事干渉することに対する反発を抑えることができる。
以上のように、プーチン大統領は、入念な計算をした上で、このタイミングでアサド大統領を受け入れたのだと筆者は見ている。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)