「まず『千夜一夜物語』にのっとった全体構成がいい。美しくも無力な女の語り手としての独奏バイオリン、威圧的な王様を表すオーケストラという対比を軸にして曲は進む。各楽章には、海や祭りや愛や冒険といった変化に富んだイメージがある。こうした基本プランと管弦楽法がうまく溶け合ったのが『シェヘラザード』なのだ」と音楽評論家の許光俊(きょ・みつとし)氏は特徴を語る。
後にリムスキー=コルサコフは、ペテルブルク音楽院の作曲と管弦楽法の教授に就任する。このためロシア・旧ソ連の作曲家の多くは弟子筋にあたる。グラズノフ、ストラビンスキー、ショスタコービッチらだ。その中の一人にアメリカ・ハリウッドで活躍したティオムキンがいる。アカデミー作曲賞の「真昼の決闘」「OK牧場の決斗」など西部劇が知られる。
ハリウッド映画に影響
元チャイコフスキー博物館学芸員のマリーナ・チュルチェワ氏は「意外にもリムスキー=コルサコフのオーケストレーションを忠実に継承したのは、ソ連の作曲家よりイタリアのレスピーギとハリウッド映画の音楽だった。近くにラフマニノフがいたこともあるが、ハリウッド映画音楽の華麗な音響は、リムスキー=コルサコフの存在なしには考えられない」と指摘する。