旅人は幸運とともにやってくる。出会いに感謝し、食事をして酒を酌み交わす。「ここで僕は、ひとつの祈りの形を知りました」。話が途絶えた瞬間、「それでは次は私が祈ります。今日の出会い、そして先祖と家族と仲間に感謝して、乾杯」。誰ともなく祈りの言葉をささげる。しばらくすると、別の人が祈りをささげる。
「家族への、周囲の人々への、そして神への感謝の言葉を、私たちはなかなか口にしない。しかし私たちはつながりの中で生きていて、感謝が関係を育む。忙しさを言い訳にしてきた自分は、甘えていたのだと痛感しました」
≪伝統と誇り 守り続ける凛とした姿≫
独立後もロシアとのあいだで摩擦を繰り返してきたジョージア。2008年8月、南オセチア紛争が勃発、自治州の領有権をめぐり、戦闘態勢に突入した。激戦地となったゴリを訪れた井浦さんは、ある青年に街を案内してもらった。国際法で禁止されたクラスター爆弾の傷跡が生々しい。説明する青年の頬に涙が伝った。
南オセチアから逃れてきたジョージア人の難民キャンプがあると聞き、訪れた。故郷を追われて7年、立ち入りは許されていない。大人たちの話を聞くと切実で、「仕事をしたくても仕事がない。どうしたらいいんだ」と嘆く。井浦さんは、何もできない己のふがいなさに押し潰されそうになったという。