劇場血の海に
「アラー・アクバル(神は偉大なり)」「シリアのために」。競技場近くの爆発とほぼ同じころ、約7キロ南のバタクラン劇場近くのカフェでは、黒い服で素顔をさらしたままの若い男らが自動小銃を乱射し始めた。
その後、劇場で行われていた米ロックバンドのコンサートに乱入。自らのイスラム教への信条を誇示するかのように、叫び声を上げて立てこもった。劇場は1月にテロが起きた風刺週刊紙、シャルリー・エブド本社に近い。男らは約1500人が中にいたとみられる劇場後部に立ち、弾を装填(そうてん)し直しながら10分以上にわたって銃を撃ち続けた。
「まるで鳥でも撃つようだった」。この劇場にラジオ局のリポーターが居合わせていた。「恐怖の10分間、全員が床に伏せていた」。男らは、床に伏せた人々を次々と狙い撃ちにした。「大虐殺だった。倒れた人を踏み越えて出口を探した」
男らが弾をこめ直す瞬間を見計らって逃げ出したリポーターらは、劇場の外で20~25人が道路に横たわっているのを目の当たりに。その多くが遺体だ。血の海と化した地面。リポーターはうわずった声で「恐ろしかった」と振り返った。犠牲者数はこの劇場が最も多かった。