中村元の他を絶する研究力は原始仏教の解明にあるが、仏教の深みと香りと独創性を浴びるには、大乗仏教になじむべし。この4巻は「原始仏教から大乗仏教へ」「大乗仏教の思想」「空の論理」「仏教美術に生きる理想」になっている。元さんには独特の「語り口」があって、研究論文ではそれがなかなか実感できないが、大乗仏教論からはそれが伝わってくる。とくに「空の論理」に痺れる。
【KEY BOOK】「世界思想史」(中村元選集別巻1~4巻/春秋社、7020円・10260円・7560円・7020円)
古代思想・普遍思想・中世思想・近代思想の4巻。比較思想の真骨頂がわかる。世界の各民族や各宗教が「普遍性」という軸をどのようにあらわしたのかが、根本軸だ。そのうえで別巻「日本的仏教の世界性」を読んでみたい。日本仏教はインドとも中国とも異なる独自性があり、そこに明恵・法然・親鸞・道元・日蓮・一遍が登場した。その意義こそが今日の日本の混迷を晴らしてくれる。