【KEY BOOK】「古事記物語」(鈴木三重吉著/角川ソフィア文庫、637円)
三重吉の真骨頂はいろいろの作品や活動にあらわれているが、ぼくは『古事記物語』を多くの読者に薦めたい。それまで誰も子供のための日本神話を書いてこなかった。それを三重吉がやってのけた。これはヨーロッパで聖書物語が何度も子供用に執筆されてきたことにくらべると、300年ほど遅いのだが、それでもここから、日本の子供たちは天の岩戸や大国主命などの「神さま」の話を読めるようになったのである。
【KEY BOOK】「日本童謡集」(与田準一編/岩波文庫、758円)
この一冊はどうしても手元においておいてほしい。白秋・八十・雨情はむろん藤村・鏡花・竹久夢二・金子みすずまで収録されている。「月の砂漠」「かなりや」「叱られて」「青い眼の人形」「からたちの花」などには楽譜もつく。大正昭和の童謡は子供のためだけのものではない。今日の日本が忘れてしまった根本的な心情を、琢磨され陶冶された言葉で綴ったものだ。今は亡き立川談志がこれらの童謡こそ日本の誇りだと言っていたことが思い出される。