今年で12回目となる「野底つぃんだら祭り」は、強制移住のあった八重山の歴史を振り返りながら、文化や芸能を後世に伝えるために始まった。
石垣島と西表島の中間にある黒島(くろしま、八重山郡竹富町)に住んでいた男女の悲しい物語がモチーフとなっている。
強制移住のために黒島に住んでいたマーペーという名の女性とカニムイという男性が引き裂かれた物語。マーペーは、寂しさのあまり野底岳に登って故郷の方を眺めようとしたが、於茂登岳に阻まれ故郷を見ることができずに泣き崩れ、山頂で岩になったという民話だ。そこから「野底マーペ」と名付けられた。つぃんだら節という歌として今も引き継がれている。この民話は1977(昭和52)年に歌手の小柳ルミ子が歌った「星の砂」の題材にもなった。
≪旅の予習で思いがけない発見≫
2004年に野底小学校創立50周年記念行事が行われ、歴史認識を深め、地域の交流や伝統芸能の継承を目的として「野底つぃんだら祭り」が始まった。面白いのは、誰が主催というわけでもなく、学校側や地域住民の有志から成り立っていることだ。祭り自体の歴史は浅いが、その背景には何十年にもわたる歴史が存在する。