日本には地域ごとに伝統的な祭りや催しが点在する。中でも沖縄県は年間を通して非常に多い。石垣島でも年間に行われる祭りは数多く、その全てに参加しようと思うと、地元の人でも難しいくらいだ。
全国的に知名度が高いのは、旧暦の5月4日(今年は6月19日だった)に行われる「ハーリー」と呼ばれる海神祭である。ハーリーとは「爬竜(はりゅう)」の中国語読み。沖縄で伝統的に使われてきた漁船「サバニ」のへさきに竜頭、艫に竜美尾の装飾をつけた船が祭りで使われる「爬竜船」だ。
石垣島で代表的な海神祭は、石垣漁港で開かれる「石垣市爬龍船競漕(きょうそう)大会」、東部・白保(しらほ)地区の「白保ハーリー」、北部・伊原間(いばるま)地区の「船越屋(ふなくやー)ハーリー」の3つ。中でも「船越屋」は一般参加ができるので人気がある。
船越屋とは、伊原間の特異な地形が由来の言葉だ。伊原間は、太平洋から東シナ海までの距離が300メートルにも満たない、細くくびれた形。なので海が荒れると往年の海人(うみんちゅ=漁師)たちは、自ら船を担いで東シナ海と太平洋側を行き来していたという。