過激派組織「イスラム国」(IS)がマスタードガスを生産している疑いがあるとの見方を示した化学兵器禁止機関(OPCW)のアフメット・ウズンジュ事務局長(左)=2015年12月15日、フランス・首都パリ(AP)【拡大】
ここで重要なのは、ウズンシュ氏が、ISが、シリアではアサド政権軍の化学兵器貯蔵庫へのアクセスが確認されない、イラクではサダム・フセイン政権時代の化学兵器貯蔵庫に立ち入れなかったと述べていることだ。OPCWは、国際機関であるが、生物兵器、化学兵器の拡散に関しては、独自のインテリジェンス・ネットワークで協力している。さらに主要国のインテリジェンス機関もOPCWに生物・化学兵器の拡散についての、機微に触れる情報を提供している。従って、ISが、自力でマスタードガスを製造しているという情報は、信憑(しんぴよう)性が高い。
マスタードガスは、塩化硫黄とエチレンから得られる油状液体である。純粋な液体は、無色、無臭であるが、不純物が加わるとカラシ(マスタード)やニンニクのような臭いがする。合成ゴムの原料として用いられるが、強い毒性を持つ。気化すると強いびらん性毒ガスとなり、第一次大戦中、ベルギーのイペールの戦闘でドイツ軍が使用したことから、イペリットともいう。ISは、マスタードガスを抑止目的ではなく、実践で使用するために生産している。国際法では毒ガスの使用は厳しく禁止されている。ISがマスタードガスを使用したという事実が明らかになれば、それだけで国連による武力制裁の対象になりうる。
核兵器、生物兵器と比較すれば、化学兵器の製造は簡単だ。しかし、そのためには、専門家を確保し、工場を建設する必要がある。ISにその経済力があるとは思えない。ISを支援している国家がある。