過激派組織「イスラム国」(IS)がマスタードガスを生産している疑いがあるとの見方を示した化学兵器禁止機関(OPCW)のアフメット・ウズンジュ事務局長(左)=2015年12月15日、フランス・首都パリ(AP)【拡大】
イラクとシリアは、破綻国家化している。この状況で、シリアとイラクにおけるイランの影響が急速に拡大している。イランは、シーア派(12イマーム派)の原理主義国家だ。イラク、シリアのみならず、バーレーン、イエメン、サウジアラビア東部にもシーア派イスラム革命を輸出している。
サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、カタールなどにとって、「ISとイランのどちらを選ぶか」という二者択一を迫ったならば、間違いなくISを選ぶ。もちろん、ISは、サウジアラビア、UAE、カタールなどの湾岸諸国にとって脅威だ。しかし、軍事力からすれば、取るに足りない存在だ。イランを牽制(けんせい)するためにサウジアラビアやカタールがISを財政的に支援するというシナリオは十分ある。
今後、各国のインテリジェンス機関が、ISのマスタードガス工場に働く専門家が、どこで雇われ、誰がカネを出しているかについて、詳細に調査するであろう。もっとも、サウジアラビアやカタールがISに対して資金援助をしているという証拠が出て来たとしても、欧米諸国はそれを阻止するための有効な手だてをもたない。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)