もちろん、景気回復に伴う資金需要もある。トヨタ自動車の場合、発行した600億円を次世代環境車の開発に振り向けるほか、花王もアジアなど世界市場の開拓に向けての攻めの投資資金として起債したという。
もともとメンテナンスなど旺盛な資金需要があり、定期的に社債を発行している企業もある。その代表例が、東日本大震災以来起債が止まっていた電力・ガス業界。“電力債”という言葉があるほど、個人向け社債の中心的在存だ。今年になって、徐々に起債を再開したことも相対的な発行額増加に寄与した。NTTなどの通信業界、小田急電鉄、近畿日本鉄道、東武鉄道などの電鉄業界も同じ事情で常連だ。
発行額が膨らみ、個人向けも活発化したというのが2013年の個人向け債券市場の状況だ。ただ、定期預金に比べれば利率は高いとはいえ(右下の表参照)、「2013年の発行条件は企業に有利なものでしたが、個人の運用対象としてはお勧めできるものではありませんでした」と前川さん。確かに5年で年率1%を超えている債券はほとんどないうえ、7年、10年と長期債の発行も多かった。決してもろ手を挙げて購入する条件ではなかったともいえる。