平成27年度補正予算案は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)関連政策大綱実現に向け計3403億円を盛り込んだ。平成5年の関税貿易一般協定(ガット)の多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)対策予算は農業と関係ない温泉施設などの公共事業に多くを充てた。その反省を生かし、今回は農業や企業の競争力強化に重点を置いた。
対策の柱として、農地や水路など農業インフラを整備する農業農村整備事業に計940億円を計上。農地の大区画化を進めることを明記した政府のTPP政策大綱を反映させた。
畜産農家の収益向上につながる機械導入や施設整備を進める「畜産クラスター事業」と中山間地域などの畑や果樹園の収益性を高める「産地パワーアップ事業」にも重点配分。いずれも複数年度で活用できる基金方式にし、現場で利用しやすいよう配慮した。
また、日本製機材や放送コンテンツの海外展開を拡大するための支援などに計280億円を計上した。
TPP関連予算の3403億円とは別に、今回の補正は中小企業の海外展開を支援する「新輸出大国コンソーシアム」構想などに計2100億円を盛り込んだ。TPPの活用促進も想定しており、これを含めるとTPP関連予算は実質6千億円程度に積み上がる。
ウルグアイ・ラウンド対策は総額約6兆円を投じたが、過半を農業の体質強化とは直接関係がない土地改良に振り向け、バラマキと批判された。自民党の小泉進次郎農林部会長は「今回の土地改良予算は総額の約3割で、大規模化や基盤整備に特化している」と強調する。ただ、政府が近く公表するTPPの影響試算は今回の補正に反映されておらず、TPP対策としての根拠を疑問視する批判が一部議員から上がっている。