記者会見を終え、席を立つ日銀の黒田東彦総裁=15日午後、東京都中央区の日銀本店(福島範和撮影)【拡大】
日銀の黒田東彦総裁は13日、東京都内で講演し、新興国経済の減速や円高・株安などで「リスクはダウンサイドにある」と述べ、経済・物価に下振れリスクがあると懸念を示した。「海外経済」と「予想物価上昇率(企業や家計が予想する将来の物価上昇率)」を詳しく説明しており、この2点が追加の金融緩和を占うカギとなりそうだ。
黒田総裁は、海外経済が最大のリスク要因と指摘。新興国やブラジル、ロシアなどの資源国について「先行きの不透明感が根強く残っている」と言及した。特に中国については「過剰設備の調整が長引く場合には、新興国の(景気)回復を遅らせる可能性がある」と憂慮した。
先進国についても、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースや英国の欧州連合(EU)離脱の可能性など、「不透明な要因がある」と解説した。
こうした海外リスクで経営者の心理が悪化すれば、「設備投資や人材投資などの前向きな支出行動を抑制させる可能性がある」と述べた。
もう1つのリスクは、このところ弱含んでいる予想物価上昇率の動きだ。
原油安で物価が伸び悩む中、「先行きの賃金上昇ペースには不確実性がある」とし、金融市場の混乱などが「企業がもう一歩前へ踏み出す動きを躊躇させた面がある」と分析した。
日銀は、2月に導入したマイナス金利政策の効果を見極めるとして、4月の金融政策決定会合で追加緩和を見送った。ただ、今回の講演では「金融政策は機動的に行うことが持ち味だ。効果がはっきりするまで待つということはない」と釈明。また、「『量』『質』『金利』のいずれについても追加緩和の余地は十分にある」と従来通りの強気を貫いた。