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わかりにくいバター輸入のしくみ 「国がもうけて、消費者にしわ寄せ」との声も
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独立行政法人・農畜産業振興機構が実施する輸入バターの入札が行われる部屋=2月5日、東京都港区
2月5日午前11時、東京都港区にあるオフィスビルの一室。机の真ん中に木製の箱が置かれ、係員がひとり控えている。独立行政法人・農畜産振興機構によるバター輸入の入札だ。
この日、1120トン分のバターを輸入する権利をめぐって応札したのは6社。1社ひとりずつ順番に入室し、所定の書式に必要事項を書き込んだ用紙を箱に入れて退室する。制限時間は開始から30分だが、全社が紙を入れ終われば解散。係員が箱を開け、最も低い金額を提示した社から順に応札量をコンピューターに入力していく。今回の入札数量の1120トンに達したらそこで打ち切りだ。落札したのは2社で、その内容は同日午後5時に同機構のホームページ上で公表された。
日本は1993年12月に妥結した関税貿易一般協定(GATT)多国間貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)で過去の輸入実績に基づいたカレント・アクセス(CA)分として生乳換算で13万7000トンの乳製品を毎年輸入すると約束し、協定が発効した95年度から実施している。
このCA分の調整を一括して担当しているのが前述の同機構だ。法律で規定された農水省所管の法人で、毎年度、需給や価格動向をみながらバターや脱脂粉乳など、どんな乳製品をどれだけ輸入するかを決め、輸入業者や売り渡し先を入札で配分している。CA分のほか、国の追加輸入分も同様だ。「菓子メーカーなどのユーザーに必要な量をきちんと届けるのが第一義です」と畜産需給部の石橋隆部長は話す。
注目点は、機構が輸入業者から徴収する「調整金」だ。輸入には関税がかかる。財務省の実行関税率表(2015年1月版)によれば国が輸入するバターの関税は35%。機構は入札で関税分を含めたバターの輸入価格と売り渡し価格を決めていて、この売買差額が調整金になる。
例えば2月17日に実施された売買同時入札で落札されたバラバター(20~25キロの業務用冷凍バター)の平均輸入価格は1キロあたり695円、売り渡し価格は同1460円だったので平均輸入額を差し引くと765円。これに同日のバラバターの入札量を掛けた金額が機構に入る。この日は1-5キロの小物バターの入札も実施されたので、機構はこの分の売買差額も徴収する。
一方で、乳製品の輸入関税は段階的に自由化が進んでおり、世界貿易機関(WTO)協定でバターはいま29・8%に1キロあたり985円を上乗せした額を払えば国の入札を経なくても輸入できる。ただし985円のうち関税当局に回るのは179円で、残る806円は機構が「上納金」(マークアップ)として徴収する。
機構が税関に回す証明書がないと通関できないしくみになっている。機構を経由するより支払う額が多くなるためこの一般輸入は大量ではないが、それでも国内のファンに応えるためブランドバターを輸入する業者はいる。
こうして機構が得たバターなどの売り渡しで得た金の合計は2013年度で約86億円。これに海外からバターを輸入するために買い入れた金の約63億円を引いた約23億円が「加工原料乳生産者補給金」の一部として国内の酪農家保護に回った。言い換えれば機構は法律(加工原料乳生産者補給金等暫定措置法)で規定された酪農家保護費の徴収機関でもあるのだ。2014年度はまだすべての入札が終了していないが、追加輸入の実施などで「機構から補給金に回る分は全体で100億円を超して過去最高規模になる」(石橋部長)見通しという。
バター輸入のしくみについて機構側は「すべて国が法律で決めたものだ。得た差益は酪農家への補給金に回っており、決して利権目的ではない」と強調する。だが農業ジャーナリストの浅川芳裕さんは「普通の人からみるとわかりにくい。あらかじめ国がもうかるためのしくみがつくられて、消費者にしわ寄せが行っているのではないか」とみている。