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きょうから消費税8% 17年ぶり引き上げ 「消費の谷」警戒 アベノミクス次の矢は
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消費税の税率が4月1日、5%から8%に引き上げられる。税率上げは1997年4月以来、17年ぶり。増税分は社会保障制度の財源に充てられ、一定の財政改善につながる。一方、家計などの税負担は2014年度に5兆円程度増える。4月以降は買い控えで消費が冷え込み、安倍政権下で続いてきた経済成長が減速するとの懸念が強い。
安倍晋三首相は(3月)31日の参院決算委員会で「4~6月期に(駆け込み需要の)反動減の影響をなるべく緩和し、7月から成長軌道に戻れるよう全力を挙げる」と表明。5兆5000億円規模の経済対策を早期に実施する考えを強調した。
増税に伴い商品の価格表示も一斉に切り替わる。昨年施行された消費税転嫁法ではこれまでの税込みに加え、税抜きの表示も特例で認められた。流通大手は4月から税抜き表示とするところが多く、消費者には総額が分かりづらくなりそうだ。
百貨店やスーパーなどは(3月)31日深夜にかけて、値札の張り替えやシステムの最終確認といった作業に追われた。コンビニの商品価格や現金自動預払機(ATM)の手数料などは(4月)1日午前0時以降、増税分を上乗せして変更。鉄道の運賃は(4月)1日の始発から増税され、一部の外食では(4月)1日午前に価格が切り替わる。
≪「消費の谷」警戒 アベノミクス次の矢は≫
消費税率が17年ぶりに上がり、駆け込み需要に沸いた小売り現場は一転して消費の谷に身構える。税率10%への再増税判断が年末に迫り、家計には出口の見えない負担増が続く。景気と財政を両立できるのか。アベノミクスの行く道は険しい。
増税前の最後の週末。ダイエー新浦安店(千葉県浦安市)では、買いだめの動きがティッシュペーパーや冷凍食品、菓子にも広がった。「3%(の上昇)は大きい。1円でも安い方が助かる」。主婦(69)は洗剤やシャンプーを大量に買い込んだ。
平日の3月31日もヤマダ電機の東京都豊島区の店舗は客でごった返した。電子レンジや掃除機など当日持ち帰り可能な家電がよく売れた。3月は百貨店も軒並み売り上げを3割程度伸ばした。
だが「山が高ければ谷は深い」(ニトリホールディングスの似鳥昭雄社長)。前回増税時の1997年4月は百貨店の売上高が14%減と急落、前年割れが長引いた苦い記憶は消えない。
当時すがった「消費税還元セール」は、中小企業の価格転嫁を優先する安倍政権が禁じた。4月に使える割引クーポン、春の福袋、逆値下げと、各社の反動減対策には苦労の跡がにじむが、効果は未知数だ。
「増税後は無抵抗。ギブアップです」。似鳥社長はさじを投げた。
「7月から現在の成長軌道に戻れるよう全力を尽くしたい」。安倍晋三首相は(3月)31日の参院決算委員会で、景気を短期で立て直すと強調した。
97年は銀行破綻やアジア通貨危機も重なって景気は泥沼に陥った。その再現を心配する向きも一部にあるが、企業に賃上げを迫ってねじ伏せた安倍政権は、景気の先行きにも強気の見方を崩さない。2014年度の実質経済成長率は1.4%、個人消費も0.4%増を見込んでいる。
消費税率10%への再増税判断では7~9月期の景気が鍵を握る。財務省は13年度補正予算と14年度予算で執行前倒しの数値目標を打ち出した。公共事業が息切れする秋以降に補正予算を求める声が高まるのも覚悟の上だ。
法人税減税、所得税の配偶者控除縮小で矢継ぎ早に指示を出した安倍首相も、こと再増税に関しては言質を与えない。
3月20日の記者会見では「歴代政権が手をこまねいているうちに17年もの時間が過ぎた」と増税の必要性を指摘する一方、「ようやく手に入れたデフレ脱却のチャンスを手放すわけにはいかない」と景気重視も強調してバランスを保ってみせた。
ロシアをはじめ不安定な海外経済、統一地方選と自民党総裁選を15年に控える政治情勢。首相が増税見送りの誘惑に駆られる材料には事欠かないが、実際に見送ればその代償も大きい。
3月12日の子ども・子育て会議で、政府は財源不足を理由に計画から4000億円削った7000億円分の子育て支援策を示し、関係者の不興を買った。だが、その7000億円も消費税率10%が前提だ。増税を見送れば、安倍首相が掲げる「待機児童解消」はたちどころに行き詰まる。
日本の強みだった経常収支が赤字定着の危機に瀕(ひん)していることも、財政不安をかき立てる。「昨年考えていたより追い込まれている。債券市場が荒れるかもしれない」。国際協力銀行の渡辺博史総裁は、国債価格の急落に不安を漏らした。(SANKEI EXPRESS)