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春のオーロラに思わず絶叫 カナダ・イエローナイフ

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春のオーロラに思わず絶叫 カナダ・イエローナイフ

更新

湖の氷が溶け出し、間もなく湖面に映る逆さオーロラの撮影が出来る季節となる=2014年4月19日、カナダ・イエローナイフ(田中雅美さん撮影)  午後8時、夕焼けで赤く染まった空を覆うようにオーロラがうっすらと現れてきた。「これは絶対に撮れるぞ」

 薄い氷が張った湖の上を慎重に進み、カメラをセットした。すると、地球の先端から地上までが1本のラインで結ばれ、そこにあたかもオーロラのカーテンが降りてきたような光景が広がった。誰もいない氷原で思わず「うわー」っと絶叫した。

 カナダ・イエローナイフ。オーロラ撮影の聖地とされる場所だ。私は今年初めて4月に訪れ、春のオーロラの撮影に成功した。

 春のオーロラは4月の半ばごろから約1カ月くらい撮影が可能だ。それ以降は夜がなくなり白夜の季節となってしまうので、オーロラ自体の撮影が不可能となる。冬には午後5時くらいにあたりは暗くなってしまうが、春は日没時間が深夜0時くらいと遅いため、夕焼けが残った空にオーロラが出現する可能性が高くなり、残雪と絡めたこれまでにない写真が撮影できる絶好のチャンスとなるのだ。

 今回の撮影では、西の空に夕焼けが広がり、月が上った東の空は焼けたように赤く染まり、頭上を覆うように降り立ったオーロラが残雪を照らし出すという滅多に目にすることのない幻想的な光景を収めることができた。これは満月後の2日間くらいしかチャンスがない。私は6日間に及ぶ撮影の中で全ての日においてオーロラを撮影できるという幸運にも恵まれた。

 実は春オーロラの撮影には尻込みしていた。オーロラ撮影に適した季節は秋から冬で、日本から出発する大手旅行代理店などが組むオーロラツアーは、この時期には全て終わっている。

 雪解けする春は道はぐちゃぐちゃの悪路となり、現地のツアーサポートなどもほとんどなくなっているので、自分の力だけで撮影ポイントに行かなくてはならない。そうした理由から私もガイドとして、日本から客を連れて春のオーロラ撮影に行くことを避けてきた。

 ≪手袋要らず 軽いフットワークで激写≫

 しかし今回、現地のドライバーとなる日本人の方が同行してくれることになり、日本からアマチュア写真家の方を数名連れてくることができた。

 イエローナイフはオーロラオーバル(オーロラが同時に出現する領域)の真下に位置しているため、オーロラが活発ではない時期でも素晴らしいオーロラが見られる確率が非常に高い。

 とにかく春のオーロラは素晴らしいの一言だ。冬にはカメラ操作を妨げる手袋が最大のネックとなるが、春にはいっさい必要ない。さらに重たい防寒着を着用しないで済む。フットワークが良いのでさまざまな撮影ができるなど良いことだらけ。今後は私のオーロラ撮影は冬ではなくて、春が主流になりそうだ。

 また、このオーロラの発色を再現できたのは、現在使っている富士フイルム社製のカメラ(FUJIFILM X-T1)のおかげでもある。撮影はRAWデータで行い、センサーの性能がよいのでどんな悪条件でも撮影可能。加えて発色と画像処理エンジンが優秀なので、細部にわたって納得のいく表現ができるのだ。

 もうすぐ5月。イエローナイフでは川や湖の氷が溶け出し、熊などの野生動物も冬眠から覚める。北緯60度の春がまもなくやってくる。(しかし今回、現地のドライバーとなる日本人の方が同行してくれることになり、日本からアマチュア写真家の方を数名連れてくることができた。

 イエローナイフはオーロラオーバル(写真・文:写真家 田中雅美/SANKEI EXPRESS

 ■たなか・まさみ 1961年、埼玉県生まれ。地元の工業高校を経て、東京写真専門学校(東京ビジュアルアーツ)を卒業。コダック系の現像所に2年間勤務し、全紙や大型プリントなどの手焼き作業に携わった。一方、高校時代から自宅に暗室を作り自ら現像するなどして写真に独学で取り組み、22歳で野鳥写真家に。その後、自然写真家に転身、富士フォトサロンをはじめコニカミノルタプラザなどでオーロラアート展を開催。旅行会社主催の撮影教室やカルチャースクールで講師も務め、多くの受賞歴を持つ。

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