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航空自衛隊新田原基地 飛行教導隊 敵役演じ「空の防人」育てる 

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航空自衛隊新田原基地 飛行教導隊 敵役演じ「空の防人」育てる 

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訓練に向かうパイロット、原大(はら・だい)1尉のヘルメットには「AGGRESSOR(侵略者)」の文字が=2014年4月23日、宮崎県児湯郡新富町の航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地(鈴木健児撮影)  右胸にドクロ、左肩にコブラのワッペンを付けた「AGGRESSOR(アグレッサー・侵略者)」と呼ばれる航空自衛隊のパイロット集団がいる。新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県新富町)の飛行教導隊の別名だ。

 隊員は敵機を意味する特殊迷彩塗装を施した主力戦闘機F-15(通称・イーグル)を操り、高い飛行技術と士気を持ち、選び抜かれたパイロットの精鋭たち。彼らが演じるのは「日本の敵役」だ。

 空の脅威となり得る日本近隣諸国の空軍の特徴や戦技などを調査解析して徹底的に模倣。航空自衛隊の千歳(北海道)、三沢(青森)、新田原、小松(石川)、百里(茨城)、築城(ついき、福岡)、那覇(沖縄)など各基地に出向いては「侵略者」になりきって、基地の第一線部隊の「ファイターパイロット」に対して、より実戦に近い戦況を体験させる巡回教導を行っている。「空の防人」を育てる屈強な男たちといったところだ。

 教導のため各基地に降り立った彼らを前に、各部隊の隊員らは背筋が伸びるというほど空自のなかでも一目置かれる存在だという。

 高い技術を保つため、新田原基地でも毎日、日本側と仮想敵国側に分かれて空中格闘訓練(ドッグファイト)を行っている。高度5000メートル以上、時には音速(マッハ)より速いスピード、薄い酸素、急上昇や急旋回で体にのしかかる重力…。過酷な状況の中で求められるのは冷静な状況判断だ。

 飛行後、各機の空中記録映像を確認し、経路、行動が原理原則にのっとって正当なものだったかを全員で確認する。張り詰めた空気の中でのブリーフィングは数時間に及ぶこともあるという。

 ≪最強の「影」でありたい≫

 ある隊員は「航空自衛隊においてブルーインパルスが脚光を浴びる“光”なら、対照的な飛行教導隊は最強の“影”でありたい」と話す。パイロットの原大(だい)1尉(31)は「敵役を演じるわれわれだからこそ常に襟を正し、最高技術と能力を保ち、部隊の見本となることを心掛けています」と力強く話した。

 整備隊の別府洋祐2尉(29)は「空中格闘戦は機体を酷使するため、機体整備はより重要。日本一のパイロット集団には日本最高レベルの整備を、と心掛けています」という。

 日本の空を安全に保つために、航空自衛隊は中期防衛力整備計画により、今夏以降、飛行教導隊と浜松基地(静岡県)の高射教導隊、百里基地(茨城県)の基地警備教導隊などを再編し「航空戦術教導団」(仮称)を立ち上げる。戦術や技量の向上を図るのが狙いで、「敵役」の役割がさらに高まるのは間違いない。(写真・文:写真報道局 鈴木健児/SANKEI EXPRESS

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