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【奥多摩だより】初夏の無名滝(東京都檜原村)
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檜原の無名滝=2006年5月6日、東京都西多摩郡檜原村(野村成次撮影) 東京の西の端、檜原(ひのはら)村には滝が多い。秋川に沿った東側のわずかな部分以外は、周りを尾根筋に囲まれ多くの沢があるためだ。近くまで行けて、名前が付いた滝は50ほどあるという。東京の結氷する滝として知られる払沢(ほっさわ)の滝は一番人気だがほかにも、天狗滝、九頭龍の滝、雨乞の滝…。
あきる野市との境界近くに大滝がある。養沢川(ようざわがわ)の支流大岳沢(おおたけさわ)を登ったところで、山の中のどこが境界線かは不明だが檜原村の滝だ。もちろん結構な滝だが、腰を落ち着けてじっくり撮影しようと思うほどではない。むしろその少し下流にある落差が3メートルにも足りない無名の滝にひかれるのだ。流れが割れていい雰囲気がある。訪れた人は大滝ばかりを見て、そんな名もないものには誰も注目しない。しかしいつも、レンズをかえてシャッタースピードをかえて、粘ってしまうのだ。そこを訪ねた数年前の初夏、流れの岩はコケに包まれて黄緑色に染まっていた。
有名観光地にはあまり興味がない、路傍の光景のほうがずっといい。有名人よりも、市井の人を撮ってみたい。そんなヘソ曲がりな性格は、滝を見るにも言えるのだろうか。
この大滝までは何度か来て、そこで引き返していた。もちろん道は続き、尾根を越えて向こう側に降りればバスに乗ることもできる。ある日どんどん登って、さあ戻るかと思ったが、「行ってしまえ!」と尾根を越えようとした。距離的にはさほどではないが、老いがきた小生にはかなりの急坂だ。「しまった!」と思ったときはもう遅く、進むしかない。ガクガクの足腰を叱咤(しった)激励してなんとか登ったが、こんどは急な下り坂だ。これは膝にくる。
奥多摩も結構歩いたが、このときが最もキツかった。やはり年相応の撮影にしよう。(野村成次、写真も/SANKEI EXPRESS)