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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】(7-5) 「いいもの」 子へ孫へ受け継いでいきたい

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【だから人間は滅びない-天童荒太、つなげる現場へ-】(7-5) 「いいもの」 子へ孫へ受け継いでいきたい

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対談はクラインガルテンにあるクラブハウスで行われた。大きな窓の外には北アルプスが広がる=長野県松本市(緑川真美さん撮影)  現在、四賀クラインガルテンの管理・運営は、旧四賀村(しがむら)の行財政改革の一環として設立された第三セクター「四賀むらづくり株式会社」が行っている。中島さんとの対話に続いて、「四賀むらづくり~」代表取締役、金井保志さん(67)と、ガルテナーの岡崎さんに、クラインガルテンの現状と課題を尋ねた。

 天童荒太(てんどう・あらた)さん(以下天童) クラインガルテンが生まれるまでの経緯を、中島さんにうかがいました。当時、「クラインガルテンなんてとんでもない」という声も多かったのではないですか。

 金井保志さん(以下金井) それはそうですよ。私は四賀村の財政課にいましたから、よくそんな批判を聞きました。過疎対策のための過疎債を、なぜ都会のために使うのだと。でも、その一方で、クラインガルテンの土地の所有者には村から賃貸料が入るため、前向きに受け止める人もいた。寝たきりの老人でも、年間5万円が入る。過疎の村でそれだけのお金を稼げるのは、珍しいことですから。

 広がり実感

 天童 いつぐらいから、村の方々みんなが乗り気になりだしたのでしょう。

 金井 実際に田舎の親戚制度などを通じてガルテナーたちと深い交流が始まると、変わってきましたね。冠婚葬祭も共にするようになった。

 天童 地域に外部の人が来ることで、いい影響はありましたか?

 金井 すごくよかった。昔なんて、都会から人が来ても、地元の人は「標準語を話せない」と背中を向けていた。でも、ガルテナーが増えて、声をかけてみたら「あ、標準語じゃなくても通じる」と(笑)。数年前に亡くなった私の親父も、自分からガルテナーに話しかけていたぐらいです。今は、緑ケ丘で、田舎の親戚制度を拡大させた交流クラブが活動しています。一緒にお祭りをやったり、この地域独特のしめ縄を作ったり。すごくいい交流ができている。

 天童 クラインガルテンが横に広がっているのですね。

 金井 交流だけでなく、農作業の余力がある人が、クラインガルテンとは別に、田舎の親戚制度のつてをたどって、村人から土地をさらに借りたりという効果もあります。

 天童 最初は入園倍率が数十倍ぐらいの人気があったそうですが、今はどうでしょうか。

 金井 今はだいぶ落ち着いて1.1倍ぐらいですね。景気の低迷も影響していますし、他の自治体にもクラインガルテンが増えてきた。うちのよさをどう発信するかが課題だと思います。

 天童 若い人の利用はありますか。

 金井 やはり60代が多いですね。年金が充実してきて、暮らしに自由ができてくる世代。有職者は、どうしても日々の仕事に追われて、足が遠のいてしまう。祖父母が契約して、子供や孫が遊びに来る、というのがうまい利用の仕方ではないでしょうか。

 岡崎英生さん(以下岡崎) そうやって、本場のドイツのように子、孫へと受け継がれていくといいですよね。(構成:塩塚夢/撮影:フォトグラファー 緑川真実(まなみ)/SANKEI EXPRESS

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