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【奥多摩だより】水の果実(東京都稲城市)

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【奥多摩だより】水の果実(東京都稲城市)

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水の果実=2014年6月30日、東京都稲城市(野村成次撮影)  小ぬか雨だ。細かい雨が降っていた。こんな言葉を誰が考えたのか、見事な表現だ。ぬれながら懐かしいメロディーが頭に流れた。台湾から来た歌手が40年も前に、大阪の御堂筋に小ぬか雨を降らせて大ヒット。小生が学生だった頃だがハッキリ覚えている。短時間なら傘など必要ないが、「梅田新道から心斎橋」まで歩くとグッショリとぬれてしまう。体にまといつくように降ってくるのだ。

 そんな雨の日、東京都稲城市の多摩川岸を歩いた。ここは多摩川の中流域。ずっと上流へ行きたいのだが、どうもここのところ腰の調子がよくない。山道を歩くのが少々つらいので、今回はこのあたりからマクロな視点で。

 護岸工事の名目で、岸の緑がどんどん消えていくが、ここにはニセアカシアの樹林が広がっている。5月の連休の頃は白い花が咲いて甘い香りが漂うが、この日は木も草もしっとりとぬれていた。新芽に雨滴がついている。それがレンズとなって、近くの花を写し込んでいた。まさに水の果実だ。雨の中の散策も時にはおもしろい発見がある。笹の葉の間にクモが巣を作っていた。その糸に雨が降り注ぎ、ビーズ玉を通したように輝いている。クモは姿が見えない。ぬれるのを嫌って、さっさと大樹の下にでも避難したのだろうか。雨の奥多摩の樹林では、傘があまり必要ではない。茂る葉が傘になってくれるのだ。まさに寄らば大樹の陰なのだ。

 クモがどの木に隠れようが勝手だが、人間社会では寄りかかる樹を間違えたら大変なことになる。友人から聞いた話だが、彼の会社の上司が代わった。お気に入りばかりを近くにはべらせて威張り散らかす。暗黒時代だったという。数年後、上司は吹っ飛びゴマスリどもは誰にも相手にされなくなった。10年が過ぎてもそのままだ。ニセの大樹に寄りかかったら悲劇ですぞ。(野村成次、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■のむら・せいじ 1951(昭和26)年生まれ。産経新聞東京、大阪の写真部長、臨海支局長を経て写真報道局。休日はカメラを持って、奥多摩などの多摩川水系を散策している。

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