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理想のフォーム まだ速くなる大谷翔平 大屋博行

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理想のフォーム まだ速くなる大谷翔平 大屋博行

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オールスターゲーム第2戦で大谷翔平選手(日本ハム)は、160キロ台を連発し162キロも計測した。これぞ理想の投球ホームだ=2014年7月19日、兵庫県西宮市・甲子園球場(荒木孝雄撮影)  【メジャースカウトの春夏秋冬】

 プロ2年目にして早くも2桁勝利を達成。投打二刀流に挑戦している日本ハムの大谷翔平選手(20)が、飛躍のシーズンを過ごしている。少し前の話になるが、甲子園で行われた7月のオールスターゲーム第2戦では160キロ台を連発。非公式ながら、2008年にマーク・クルーン投手(当時巨人)が記録した国内最速に並ぶ162キロも計測した。

 オールスター後の8月3日のソフトバンク戦では、10年の由規(よしのり)投手(ヤクルト)と並び、公式戦日本人最速の161キロをマーク。速球派投手の筆頭格となった。

 20歳の青年がこれだけ速い球を投げられる秘訣は何なのか。スカウトとして最も目を引くのは、193センチという日本人離れした恵まれた体格だ。身長の高い選手は体をもてあまし、バランスを取りづらい傾向にあるが、大谷投手には体を使いこなすバランスのよさと筋力がある。そのため、効率的な体の動きが可能となり、あの速球が生み出されるのだ。

 実際、彼の投球フォームは、投手の理想像といっていい。具体的に言うと、お尻から下の太ももの筋肉や胸の厚さが軸となることで、横にぶれて力が逃げてしまわないフォームだ。このため、体全体を使ってボールに力を伝えることができている。ボールの指への掛かりもプロ入り前に比べてよくなり、スピンがよく効く。

 速さならトップクラス

 メジャーでは、投手が潜在的に持っている力を「ロー(raw、生の)パワー」と表現する。大谷投手は、緊張感などが伴う実戦のマウンドでも、「ローパワー」を発揮できていることが大きな魅力の一つだ。

 オールスターで投じた直球は、速さだけなら、間違いなくメジャーでもトップクラスといえる。

 投球回数が3回までに制限される球宴は、スカウトにとっても先発投手の全力投球を目にできる貴重な機会だ。

 大谷投手は鳥谷敬選手(阪神)と阿部慎之助選手(巨人)というセ・リーグを代表する打者に1球ずつ162キロを投じた。テレビで観戦した限りでは、スピードガン通りのスピンが効いたボールだった。

 鳥谷選手にはそのボールをファウルされたが、そこは相手も一流のプロ選手。まして、真っ向勝負の直球が予測できる球宴なら、当てることはできる。ただ、それも甘いボール限定といっていい。低めに配球されたり、変化球を適切に混ぜられたら対応は難しくなる。

 大リーグに同じタイプの投手はなかなか見当たらないが、あえて挙げれば、09年全米ドラフト1位でナショナルズに入団し、100マイル(160キロ)超の速球を誇るスティーブン・ストラスバーグ投手の若かりし日をほうふつさせる。

 育成は日本ハムの使命

 近年、大谷選手の好敵手、藤浪晋太郎投手(阪神)をはじめ、150キロ台の直球を投げ込む投手は珍しくなくなってきた。選手の身体能力の向上が要因の一つだろう。日本人の食文化が、肉食中心の欧米化に傾いていることも無関係ではない。ウエートトレーニングをはじめとした体をつくる技術の進歩も貢献している。大谷投手も体がさらにできてくれば、直球のスピードもさらに1、2キロ上がる可能性が高い。

 不安は、右肘の故障で離脱した田中将大(まさひろ)投手(ヤンキース)のように肩、肘にかかる負荷の大きさだ。

 登板を重ねるにつれ、どうしても弱いところに勤続疲労がたまり、損傷しやすくなる。疲労が蓄積して筋肉が硬直すると、炎症が取れずに負の連鎖に陥る。今季は、登板中に足がつり、降板を余儀なくされるケースもあった。日本ハムはダルビッシュ有(ゆう)投手(レンジャーズ)も故障を避けながらうまく育てた実績がある。勝ちを求めつつも、どう育て大きく成長せさていくのか。球団は大きな使命を背負っている。(アトランタ・ブレーブスの国際スカウト駐日担当 大屋博行/SANKEI EXPRESS

 ■おおや・ひろゆき 1965年10月生まれの48歳。大阪府出身。高校中退後に渡米し、アリゾナ州スコッツデール市立コロナド高校で投手としてプレー。コロナド高を卒業後に帰国し、プロ野球阪神で練習生、歯科技工士などを経て98年に米大リーグ、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの国際スカウト駐日担当に就任。2000年からアトランタ・ブレーブスの国際スカウト駐日担当として日本国内の選手発掘に励む。

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