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料理上手 決め手は「塩」をいかに使うか 人気料理研究家の松田美智子さんに聞く

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料理上手 決め手は「塩」をいかに使うか 人気料理研究家の松田美智子さんに聞く

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ずらりと並んだ手作り調味料。「保存している間に発酵が進むものもあるので、育てる喜びがあります」=2014年9月11日(塩塚夢撮影)  【大人の時間】

 おいしくて体に健康なごはんは調味料から-。普段何げなく使っている調味料だが、単に味をつけるだけではないその効能を知ればもっと料理上手になれるはず。調味料の効果的な使い方などをまとめた『調味料の効能と料理法』(誠文堂新光社刊)を刊行した人気料理研究家の松田美智子さんに、最も基本的な調味料である「塩」の選び方やその効能などについて教えてもらった。

 「日本の料理の基本を表す言葉に『さしすせそ』があります。これは砂糖、塩、酢、しょうゆ(せうゆ)、みその順に加えるとおいしくなりますよ、ということですが、単なる慣習ではなく、『粒子の大きい砂糖を先に入れると味が入りやすくなる』というきちんとした科学的な理由がある。『さしすせそ』は日本が培ってきた味の科学の結集なのです」と、松田さん。

 その中でも、基本となるのが「塩」という。「塩をいかに使うかが料理の決め手。食材に甘味、うま味があれば、塩だけで十分なくらいです」

 4種類を常備

 まずは、塩選びから。塩は、塩分濃度の高い湖などで結晶化した「岩塩」と、くみ上げた海水を製塩した「海塩」に大きく分けられる。「海塩」の中にはさらに海水をくみ上げて物理的に水分を蒸発させただけの塩「天日塩」があり、こちらには海のミネラルがそのまま含まれている。一方、濾過(ろか)した海水を電気透析して煮詰めた精製塩は、塩化ナトリウムほぼ100%。

 「料理に海の滋養を取り込みたいので、自然な塩を使うようにしています」。天日塩の中でも、おすすめとして挙げてくれたのが、三重県伊勢市で作られている「岩戸の塩」。海水を釜で煮詰めただけという自然なもので、まろやかなうま味と甘味が特徴。「素材の味を飛ばさない。私の個人的な意見ですが、日本の料理には、やさしい味わいの日本の塩が合うのではと思います」

 「岩戸の塩」は味付け全般に使い、下ごしらえには、手ごろな価格で「粗塩」とよばれる「赤穂の天塩」。さらに、食べるときにつけるフランス産の“フルール・ド・セル”(フランス語で『塩の花』の意)と呼ばれる「ゲランドの塩」と、ミルで挽いて使う「クリスタルソルト」の計4種類をキッチンに常備しているという。

 塩の作用には、(1)脱水(2)下味をつける(3)最後に味を決める(4)青菜を鮮やかにゆで上げる(5)腐敗を防ぐ(6)甘味を引き立てる-の6つ。「基本は使いすぎるのではなく、最小限の量で『味を引き立てる』ということにあります」

 調味料にこだわる

 「さしすせそ」はもちろんのこと、干し椎茸を戻さずにそのままオリーブオイルとパルミジャーノ・レッジャーノと合わせてフードプロセッサーにかけた「椎茸パルミジャーノペースト」や、麹に干しエビや八角などを加えた「甘辛麹」など、冷蔵庫にはずらりと手作りの調味料が並ぶ。「ショウガやニンニクなど、ちょっとだけ余った薬味をしょうゆなどに漬けてみたり…。料理の幅がすごく広がります」

 塩だけでなく、しょうゆやみそなども、信頼できる生産者のものを選ぶようにしている。「確かに普通のものと比べると値段は張りますが、その分、4倍にも5倍にもなって返ってくる。『きちんとした調味料を使いこなしている』という自信も持てますし、何より生産者を支えることができる」

 約30年、仕事として料理に関わってきた松田さん。今春刊行した『調味料の効能と料理法』は「集大成」と語る。「ちゃんとした調味料を口にしていると、やさしさや物のでき方というものも分かってくる。先人たちの教えを、今の時代に合った形で伝えていきたい」(塩塚夢/SANKEI EXPRESS

 ■まつだ・みちこ 1955年東京都生まれ。女子美術大学卒業。ホルトハウス房子氏に師事し、各国の家庭料理を学ぶ。93年から「松田美智子料理教室」を主宰。料理本、雑誌、テレビ、CM、講演、パーティープロデュースなどで活躍。

 ■松田美智子 調味料の効能と料理法 「さしすせそ」はもちろん、柚子胡椒やかんずりなど料理の幅を広げる調味料まで幅広く取り上げ、基礎調味料の選び方や使い方、手作り調味料の作り方などを一冊にまとめた。「科学的な根拠に基づいて分かりやすく、なおかつ実用的に作っています。料理をあまりしない方や、男性でも楽しんでもらえると思います」と松田さん。10月2日に東京・代官山の蔦屋書店で農学博士の小泉武夫さんとのトークショーを開催。

 2008年、東京・青山のラ・クッチーナ・フェリーチエなど全国4店舗に、日々取り寄せをしている調味料や食材を「松田美智子のお取り寄せ食堂」としてコーナーを開設した。著書に『いつでも土なべ』など多数。誠文堂新光社、1600円+税。

 【塩の作用別 レシピ例】

 (1)脱水 「きゅうりとみょうがの酢のもの」

 食塩は強い浸透圧の作用を持っている。きゅうりに塩をすることで材料から多量の水分を抜くことができる。塩でもんだきゅうりを煮きりみりんと米酢であえると、逆に調味液が素材の中へ入り味が付く。

 (2)下味をつける「牛もも肉のステーキ」

 加熱してからでは味がつかないので、その前につける。例えば、ステーキは焼いてから塩をふっても表面にしか味がつかない。厚みのある肉をジューシーに焼くには、直前(10分以内)に塩をふる。味がほどよく肉の中に行き渡ると同時に、表面のたんぱく質が固まり、焼いたときに肉汁が逃げない。

 (3)最後に味を決める 「チェリートマトと卵のスープ」

 オリーブオイルで炒めたニンニクとチェリートマトをチキンスープと白ワインで煮込み、最後に塩こしょうで味を調える。汁ものやスープの塩味はあらかたつけておいて、仕上げで調整するのが基本。最初からちょうどよいくらいにつけてしまっては、出来上がるころに煮詰まって塩辛くなってしまう。

 (4)青菜を鮮やかにゆで上げる 「小松菜のおひたし」

 青菜をゆでるときに塩を加えると、色があせるのを防ぐことができる。小松菜1束をゆでるなら、1リットルのお湯に対し、粗塩大さじ1杯が目安。りんごを褐変させるポリフェノール酵素の働きを防ぐ作用もある。

 (5)腐敗を防ぐ 「簡単白菜漬け」

 刻んだ白菜に塩をしてしばらくおくと、塩の脱水作用で白菜の中の水分が出て、白菜全体が塩水にひたっている状態になる。雑菌の繁殖が抑えられるとともに、野菜の酵素が引き出され、発酵熟成が進む。

 (6)甘味を引き立てる 「煮小豆」

 「辛い」と「甘い」の正反対の味覚を、一方を足すことで、もう一方を強める。菓子などに塩を少量入れると甘さが引き立つ。小豆を煮るときは、小豆1カップに対し、水4カップ、上白糖1/2カップと塩小さじ1杯を加える。

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