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過激なテーマの向こうに「純粋」 さめざめ
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作詞作曲、ボーカルを務める笛田さおりのプロジェクト、さめざめ=2014年7月24日(オノツトムさん撮影、提供写真) 作詞作曲、ボーカルを務める笛田さおりのプロジェクト、さめざめを初めて聴いたときの衝撃が今でも忘れられない。その曲のタイトルは「コンドームをつけないこの勇気を愛してよ」というインパクトのあるものだった。インディーズ時代だけでなく2012年のメジャーデビュー後も、楽曲によっては公の放送ができないものがあるそうだ。
メジャー1stフルアルバム「さめざめ白書」が9月24日にリリースになったが、彼女の打ち出す、女性特有の悩みや、性を赤裸々に歌うスタイルは変わらずで、聴く者を驚かすような表現がいくつも飛び出してくる。
さめざめでの表現はどんなきっかけで、どんな狙いがあるのか。笛田本人は「私自身、刺激的なトピックを歌にすることには覚悟が要りましたが、あえて勝負してみたいという気持ちがありました」と語る。
「女性に共感される曲を作りたいという気持ちからスタートして、それを赤裸々に言葉にしている人がいないと思ったのがきっかけです。実際に、今までここまで自分の気持ちを表現してくれる人はいなかった、という女性の反響が増えてきています」。一方、「男性からは耳が痛い、と言われますが、女心を知ることができると思ってくれる人もいるようです」という。
しかし、いたずらに過激な言葉やトピックを選ぶのではなく、それはあくまで入り口にすぎず、聴き進めると痛いくらいピュアな女性の気持ちが浮かび上がってくる。自分のことをもっと好きになってほしい、建前ではなく本音でぶつかり合いたいと願う気持ちがしっかりと伝わってくるのだ。笛田は「性的な部分だけでなく、その向こうにある純粋ゆえのつたなさ、まっすぐな気持ちを歌詞やメロディーを通して表現していきたいと思っています。さらに、ダイレクトな言葉でなくとも、切なさやはかなさを楽曲に詰めていきたい」と語った。
確かにアルバムの中の一曲で、映画の主題歌にもなっている「それでも生きなくちゃ」という曲は、選ばれた言葉は過激でないものの、メロディー、歌詞、曲調、展開、すべてのアレンジが、会えなくなった相手への想いを絶ち、苦しみながらも前へ進もうとする心情を表現して迫ってくる。これこそがさめざめの表現の本質であろう。表面上の言葉の、さらに奥にあるものを聴きとっていくという音楽ならではの楽しみがある。(音楽評論家 藤田琢己/SANKEI EXPRESS)