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【アラスカの大地から】極北の水は蚊の揺りかご

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの科学

【アラスカの大地から】極北の水は蚊の揺りかご

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米アラスカ州の花、ワスレナグサにとまる蚊=2012年6月29日(松本紀生さん撮影)  3000種以上もの蚊が地球上にはいるらしい。高温多湿な森林地帯特有の生物であるイメージが強いが、意外なことに、極北ほど多数の蚊が生息する地域はないという。その最たる場所がアラスカのツンドラ地帯である。

 種の数はわずか20~30種類。しかし生息数は星の数ほど、とでも例えられるだろう。

 それほど多くの蚊が発生する理由は水である。数えきれないほどの池、沼、水たまり、ぬかるみなどが、蚊の誕生に不可欠な揺りかごの役割を果たすのだ。

 夏の終わりに水中に産み落とされた無数の卵が、気温が上昇する翌年の6月ごろに孵化(ふか)する。初夏のしじまが“ブーン”という狂想曲でかき乱される、何とも不快なシーズンの始まりだ。

 メスのみが血を吸う。卵を生むために必要な栄養分を、鳥や哺乳類の血から摂取するのだ。視覚や臭覚で獲物に近づき、湿気や二酸化炭素を感知して針を刺す場所を定めるらしい。

 ≪カリブーに共感せずにはいられない≫

 この蚊に最も悩まされるのがカリブーではないだろうか。大発生した蚊の群れは四六時中カリブーにまとわりつく。草を食(は)み、休息をとる余裕も与えないほど、群がり、追い回し、血を吸い続けるのだ。弱ったカリブーの中には、衰弱し、そのまま息を引き取るものもいるほどだ。

 もちろん人間も獲物とされる。呼吸と共に鼻の穴から蚊が入るほど、全身が覆われることもある。

 そんな猛襲にどう対抗するのか。1940年代にアメリカ軍のために開発された蚊避け薬がある。実に2万種類もの化学物質をテストして作られたその薬品はDEET(ディート)と呼ばれ、現在でも極北を旅する人々の必需品となっている。蚊の触覚を不能にする効果があるという。

 だが劇薬であるため、最小限の使用が望ましく、場合によっては肌がただれてしまうこともある。結局、程度の差こそあれ、蚊の餌食になることは避けられないのである。

 それでもなおこの地に集うカリブーに強い共感を感じずにはいられない。(写真・文:写真家 松本紀生(のりお)/SANKEI EXPRESS

 ■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。1年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。TBS「情熱大陸」で紹介される。著書に「原野行」(クレヴィス)、「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー『アラスカ・フォトライブ』を開催。matsumotonorio.com

 【ガイド】

 松本紀生さんが撮影したアラスカの大自然や動物たちの写真を巨大なスクリーンに映し出す「煌(きら)めきフォトライブ 松本紀生のアラスカ・オーロラ夢紀行」を開催します。マッキンリー山に降り注ぐオーロラや躍動するザトウクジラ…。7月から9月にかけて撮影した新作も含め、ダイナミックな映像をバックに撮影時のエピソードをちりばめながら松本さんのユーモアあふれるトークであなたをアラスカの大地へと誘います。

 「煌めきフォトライブ」は、大阪市北区梅田3の4の5の「オーバルホール」で、2014年12月7日(日)午後1時開演。全席自由で2300円(未就学児童は入場不可)。問い合わせは(電)06・6647・2323(平日午前10時~午後5時)サンケイリビング新聞社(大阪)まで。

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