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新スマホ=物語×劇場×謎解き×お宝 ついに「NAZO」が誕生した 松岡正剛

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新スマホ=物語×劇場×謎解き×お宝 ついに「NAZO」が誕生した 松岡正剛

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【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)  【BOOKWARE】

 ある日、サイバードのCEO堀ロバート主知君から「松岡さん、ぼくの夢をかなえる物語ゲームを作ってください」という声がかかった。堀君とは、ぼくが「日本一のマダム」と呼んでいる母上を通しての知り合いで、これまでそれなりの付き合いはあったのだが、こんな意外な仕事の依頼がくるとは思わなかった。

 聞けば、子供の頃にキット・ウィリアムズの『仮面舞踏会』(マスカレード)という謎めいた絵本を読んだのだが、その「謎」がどうしても解けなくて悔しい思いをした。いよいよサイバードもスマホ対応ゲームを制作リリースできる準備が整った。ついては、世界30カ国対応の難問を秘めた物語をゲームにしたい、そのディレクションをお願いしたい、電子書籍を凌駕するものも狙いたいというのだ。

 これは大変な注文だ。ブックウェア的な編集力や編集装置性がいよいよゲームになるわけだ。ただしそれを150字ずつで進む物語にしなければならず、そこに容易には解けないとびきりの謎を仕込んでいかなければならない。さっそくチームを準備して、岡村豊彦君や宮崎慎也君たちにシナリオメーキングにとりくんでもらいつつ、一方で劇場型にゲームが進行するアーキテクチャをあれこれ構想することにした。

 1年半ほどで「NAZO」が立ち上がった。“Narrative Age of ZigZag Opera”の略だ。月の国を出入りする変わった物語の展開のもと、テキストと謎解きとシアター演劇とスマホゲームとが同時にシンクロするという、前代未聞のスタイルの誕生となった。ビジュアル制作はスタジオ4℃に、インターフェース設計はサイトウアキヒロ君に頼んだ。

 堀君は大いに歓んでくれただけでなく、このNAZOが解けた参加者に格別の「お宝」をあげたいと言い出して、かなりユニークなご褒美を組み立てた。ぜひ覗いてほしい。腕試ししてほしい。

 制作を監修してみて、さまざまな発見があった。第1には、スマホのゲームにはまだまだスタイル開発の余地があるということ。第2に、電子書籍はテキストの羅列である必要はないということ。第3には、物語に入るための画像は高性能であるより、少しプリミティブなほうがいいだろうということだ。

 NAZOは発進した。ぼくのアタマのなかには早くも第2弾の難問物語ゲームが浮かんできた。どうも堀君に似てきたらしい。

 【KEY BOOK】「仮面舞踏会」(キット・ウィリアムズ著/角川書店、1300円、在庫なし)

 原題は『マスカレード』。日本語版で僅か30ページくらいの絵本なのだが、謎めいた暗号やら魔法陣やら寓意の解読やら思わせぶりの文章やらが随所にちりばめられていて、ついつい夢中にさせる。

 テキストを読みながら15枚の詳細な絵図を手掛かりに、金のウサギの首飾りを捜し出すという趣向になっている。ところが、この絵本の醍醐味はそれにとどまらなかった。作者のキット・ウィリアムズはそのウサギを実際のイギリスの某所に埋めて、これを掘り当てることを読者参加の最終ゴールにしたのだ。これでイギリス中の読者が沸き立った。ウィリアムズは金属探知機で捜されることを警戒してウサギを頑丈な箱に入れたものの、当てずっぽに捜索する者やヒントを出し合って公営地や私有地を掘る者が絶えなかった。

 実は答えは「春分の光が正午に、黄色い首飾りが埋まる土の上にキャサリンの中指の影を落とす」という文言を解き、ヘンリー8世の妃の一人キャサリンの記念十字架の影が落ちたところを掘るということだった。

 しかし、意外なことにこの解答に達した者が「ずる」をしていたことが発覚した。「ずる」はウィリアムズの元カノの同棲相手で、正確なことは知らなかったらしいものの、漠然とした物理位置の情報を得ていた。このスキャンダルはその後大きく報じられたが、他方、この手の掘り出しゲームは多くのテレビ番組やイベントに登場することになった。

 もともと、この企画は出版社ジョナサン・ケープのトム・マシュラーが「いまだ誰も手掛けていなかった児童書をつくりたい」という呼びかけに、当時無名だった絵描きのウィリアムズが応じて実現したものだった。テキストも謎も絵もウサギの製作も、ウィリアムズ一人が作り上げた。

 サイバードの堀君は、この役をぼくに振るつもりだったようだが、これをスマホに入れるには、いまや強力チームが必要だったのである。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS

 ■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/

 【ガイド】

 ■NAZO公式サイト http://www.nazo-project.com

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