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銀座に「屋根裏ブックウェア」が出現 日刊セイゴオ「ひび」が見せびらかす2000冊の臨時書店 松岡正剛

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銀座に「屋根裏ブックウェア」が出現 日刊セイゴオ「ひび」が見せびらかす2000冊の臨時書店 松岡正剛

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【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)  【BOOKWARE】

 千夜千冊サイトか、フェイスブックを見てもらわないとわからないだろうが、ぼくは毎日「日刊セイゴオ・ひび」という極短日録のようなものを書いている。70~80字ずつのツイッター半分程度の文章だが、すでに3年をすぎて一千回を超えた。この「ひび」にけっこう多くの本を紹介してきた。

 数カ月前、清水敏男さんから、銀座の取壊し予定のビル全館をつかって、アート&デザイン展「The MIRROR」というものをやる。ついてはその一角に松岡さんが選んだ本の“書店”を作ってほしい、デザインは隈研吾さんに引き受けてもらうという相談があった。

 見るとスペースは小さく、大型のアート建築関係の本をきれいに並べるのでは、普通以下のものになってつまらない。そこで屋根裏部屋の見立てで、そこにぎっしり本を詰めることにした。編集工学研究所のスタッフは「ひび」の本を入れましょうと提案してくれた。

 隈ちゃんは大いに気にいって、廃材で部屋中に本棚を組みますよと言う。清水さんは古い家具を持ってきますよと言う。よし、これで決まった。ぼくは壁を少し壊して、そこにも本を入れたい、「不在の松岡正剛」が感じられる「読みさしの気配」も作りたいと思った。

 実際には壁は壊せなかったのだが、そのかわり何枚もの大小の板切れを組み合わせてプレートや看板にして、そこにメモ風のお薦め言葉を手書きすることにした。まるで山小屋の“本の道具箱”めいてきた。

 隈ちゃんは天井からLANケーブルの配線を柔らかく丸めながら、いっぱいぶら下げた。ぼくは塚田有一君に頼んでシダ植物を床にいっぱい並べてもらった。これで棚は本だらけ、上はモジャモジャ、下はシダシダになった。部屋の奥まったところには、千夜千冊のゲラに赤字を入れている痕跡を再現した。題して「屋根裏ブックウェア」だ。

 持ち込んだ約2000冊の本は、ぼくが面白がった本ばかりだ。ラスキン・矢内原伊作・伊東豊雄の造形本もあれば、モーパッサン・唐十郎・立川談志・井上ひさしの戯作もある。森村泰昌や杉本博司のアーティスト本にはフーリエやヘルマン・ワイルやオスカー・ベッカーの科学的美学をぶつけてある。世阿弥と柳生の兵法書と山岡鉄舟と内田樹が並んでいるのは、ここくらいだろう。本の並びは意外な対同(ついどう)をおこしたほうがいい。手にとりたくなる。

 ミュージシャンの菊地成孔やメイクアップアーティストのレイコ・クルックの本が揃っているのも珍しい。ユクスキュル・今西錦司・三木成夫に『虫と文明』『ゴミムシダマシ』といった“生きもの探求”の本を重ね着させているのも、一興なところだ。本は料理やファッションのように、その組み合わせはできるだけナラティブ(ストーリーライク)で、かつ、DJのようにこれらを自在なリミックスに仕立てるのが極上愉快なのである。

 この“店”の本はすべて買える。何冊でも持ち帰ってほしい。気になるなと思ったら、その瞬間に入手すること。これが「読書通」になる最大のコツだ。他のものを買ったり食べたりするのにくらべれば、本代なんてそうとう安い。ただし、「屋根裏ブックウェア」のエーギョーは11月9日まで。極短主義だ。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS

 ■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/

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