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【香港民主化デモ】警官隊と衝突、37人負傷 学生ら40人逮捕

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【香港民主化デモ】警官隊と衝突、37人負傷 学生ら40人逮捕

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政府本部庁舎近くの幹線道で、デモ隊に催涙スプレーをかける警察の特別部隊=2014年12月1日未明、中国・香港島アドミラリティ(共同)  香港の民主派デモ隊数千人が、香港島中心部のアドミラリティ(金鐘)で政府本部庁舎を組織的に包囲する抗議活動に踏み込み、これを阻止しようとした警官隊と衝突、1日までに少なくとも37人が負傷したほか、学生ら40人が逮捕された。

 現場では警棒で殴打された学生らが次々と血だらけで倒れ込み流血の事態となった。警官隊は催涙スプレーや放水も使用した。デモ隊と警官隊は金鐘駅から政府庁舎に通じる歩道橋でも衝突。混乱を受け政府庁舎と立法会(議会)が1日午前の執務や審議を見合わせたため、学生団体の周永康代表は1日、「政府機能まひなど一定程度は成功した」との認識を示した。

 一方、この混乱とは別に、政府庁舎南側の幹線道路上に約2000のテントが張られたデモ隊最大の占拠拠点に、高等法院(高裁)は1日、占拠禁止命令を出した。梁振英行政長官は1日の会見で、「警察は2カ月も忍耐を重ねてきた」と発言し、強制排除へ法的手続きに入る意向を示した。

 デモ隊は市内3カ所の占拠拠点のうち、先月26日の強制排除で九竜地区の繁華街モンコック(旺角)を失った。残る2カ所の死守を呼びかけているが、一時10万人を超えていた参加者は市民の支持や求心力を失い数千人に減っている。

 一方、政府庁舎に近い中国人民解放軍の香港駐留部隊司令部の敷地内の建物で1日朝、火災が発生。まもなく鎮火し、けが人などはなかった。原因は不明。

 ≪焦る急進派 抗議路線で内部対立≫

 香港で選挙制度の民主化を求めて9月末に始まった街頭占拠による民主派の平和的なデモが「暴力の応酬」(学生団体幹部)による流血の事態に発展した。民主派リーダーの立法会(議会)議員、李卓人氏は1日のラジオ番組で、「政府庁舎包囲は代償が大き過ぎた」と述べ、学生側にも警官隊にも多数の負傷者が出た事態を批判した。しかしデモ隊急進派の動きをもはや、穏健派が抑えられなくなっている。

 穏健派を突き上げ

 「抗議活動のレベルを今から引き上げる」。民主派デモ隊最大の拠点である香港島中心部のアドミラリティ(金鐘)で11月30日夜、民主派系学生団体の大学生連合会(学連)と高校生が中心の団体、学民思潮の幹部は近接する政府本部庁舎を指さしながら、デモ参加者に庁舎包囲を呼びかけた。

 2カ月以上も続く街頭占拠だが、行政長官の選挙から事実上、民主派候補を排除するとの中国側の決定を覆すどころか何の譲歩も得られていない。香港市民からの支持も失い徒労感を深める民主派。「(街頭占拠に続く)次の一手を探していた」(学生団体幹部)が、それが組織的な庁舎の包囲という抗議活動のエスカレートとなった。

 先月26日に九竜地区の繁華街モンコック(旺角)で裁判所の決定に基づく強制排除を警官隊が行い、その後も連日、旺角で無抵抗の学生らに警官隊が催涙スプレーや警棒での殴打など強硬措置をとったことに怒りが鬱積していた。旺角には急進派が多く、「その大半が旺角を追われて金鐘に流れて穏健派を突き上げたのではないか」(立教大学の倉田徹准教授)との見方がある。

 政府が対話拒否

 民主派は2年前に、中国共産党政権をたたえる「国民教育」の香港の小中学校での実施を10万人以上の大規模デモで撤回させるなど“成功体験”があるが、今回は政府側が「対話」を拒否したまま膠着(こうちゃく)状態が続き、焦燥感が募っていた。

 急進派は、国民教育計画や市民監視につながる「国家安全法制定」を撤回させた経緯から、街頭占拠を続けるだけの穏健派幹部を批判。先月19日に立法会議事堂内に突入しようとして穏健派と“内紛”騒ぎも起こしていた。

 学連の周永康代表ら穏健派は「デモ隊内部の空中分解は避けたい」として組織的な庁舎包囲に傾いたが、混乱を拡大する結果に終わった。民主派内部の意見対立が今後、デモ隊の活動に影を落としそうだ。(香港 河崎真澄/SANKEI EXPRESS

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