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シェークスピアは「詩」 歌のうまさ必要だ 宮本亜門、西川貴教 舞台「ヴェローナの二紳士」
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「西川(貴教)君(右)を『シェークスピア俳優として凄い』と言わせるのが僕の仕事」と話す宮本亜門さん=2014年10月3日、東京都千代田区丸の内(寺河内美奈撮影) 人気演出家、宮本亜門(56)とT.M.Revolutionの西川貴教(44)がタッグを組み、シェークスピア初期の喜劇を現代によみがえらせる。あす7日に東京で開幕する「ヴェローナの二紳士」で、1971年に米国で上演されたミュージカル版がベース。現代版に翻訳した「宮本版」はラテン音楽の要素もちりばめた、「めちゃめちゃ変わったシェークスピアになる」(宮本)という。
「(出身地の滋賀県で)農家の蔵でバンドを始めた僕が、シェークスピアと向き合う日が来るなんて」と感慨深げな西川。対して宮本は「彼が『シェークスピア俳優としてすごい』とみんなに言わせたい」とハッパをかける。
ミュージカル版「ヴェローナの二紳士」は、イタリアの片田舎ヴェローナからミラノに出てくる若者2人をめぐるドタバタの恋模様を軸に、ロックやポップスを背景にベトナム戦争や人種差別など、当時の社会問題も浮き彫りにした。翌72年にトニー賞の最優秀作品賞と最優秀脚本賞を獲得している。
日本では75年に劇団四季が上演した程度で、それほど知名度の高い作品ではない。宮本は四季の舞台を見て感銘を受けて長年、上演の機会をうかがっていた。シ
ェークスピア生誕から450年の節目でもある今年、念願の上演にこぎつけた。
宮本は「『人は恋をするとこうなる』という本質を突き、必死に生きる姿がいとおしくなる作品」と話す。ラテン音楽の味付けでカーニバル的な楽しさを出す一方、「米国版」が浮き彫りにした政治や社会の課題も織り込んだ。一部の人物をイスラム過激派に共鳴しているよう、におわせたのはその一環だ。「米国で上演された1970年代初めは時代が変わり、いろんな事象があぶり出された時期。東日本大震災の後の日本も似た状況にある。比喩の中に、家族愛から政治的なものまであらゆる要素が詰まっている」
西川は宮本の舞台に初参加。起用した理由を宮本は「シェークスピア劇は『詩』のようなもの。彼の歌のうまさとリズム感が必要だった」と話す。
西川演じるプローテュースは、ミラノで出会った女性に惚れ込み、行動を共にしていた親友や、故郷に残してきた恋人を裏切る役。「最初は好きになれなかった」と西川。だが本音で振る舞う姿は、「いちばん人間らしい役。不思議と憎めない」と苦笑する。宮本は「誰もが持つ気持ちの代弁者でもある。お客さんは彼を見て発散できると思う」と笑う。
もともと舞台に関心のあった西川だが、一時は出演依頼を断っていた。「舞台を目指して努力を重ねる人たちがいる中で、勉強していない僕が入るのは失礼だと思っていた。でも『一緒にやってみたい』と言ってもらえるのは本当にありがたいと考え直した」
西川はバンドのフロントマンとしての意識を捨て、「僕はオーケストラのパーツの一つ」と『いち役者』に徹している。ほかにも堂珍嘉邦、島袋寛子、霧矢大夢と主役級の大物がそろい、奏でるハーモニーは未知数だ。最後はハッピーエンドの大団円。「まとまるかどうか分かりませんけど(笑)それぞれの人物に何かを共感できる面白い舞台になる」と宮本はニッコリ。(文:藤沢志穂子/撮影:藤沢志穂子/SANKEI EXPRESS)
2014年7~28日、東京・日生劇場。問い合わせ 東宝テレザーブ (電)03・3201・7777。2015年1月に福岡、愛知、大阪で公演あり。