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【アラスカの大地から】清冽な流れ 黒く染めるサケの大群

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【アラスカの大地から】清冽な流れ 黒く染めるサケの大群

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サケで黒く染まった川。その正体であるピンクサーモンはわずか2年の一生を終えようとしている=米アラスカ州(松本紀生さん撮影)  生まれた場所へ回帰するサケ。無数の流れの中からふるさとの水を嗅ぎ分け、海から河口、そしてさらに上流へ。そんな彼らの後を追いかけたある日のこと。

 全長3メートルのゴムボートに取り付けたエンジンを操り、ある小さな川をさかのぼった。川幅は10メートル前後、水深は深いところでも2メートルほどだろうか。川全体が静止してみえるほどの穏やかな流れを、コケに覆われたレインフォレストが両側から包み込む。こちらの進むスピードも、いつしか徒歩ほどのゆったりとしたペースになっていた。

 サケが還る川の水は清冽(せいれつ)だ。そこかしこで休憩する魚群が、ボートに驚き、弾(はじ)けるように散っていく。申し訳ないと思いつつも、サケだらけなのでどうしようもない。

 さらに進むにつれ、きれいだった水が黒く変わっていることに気がついた。白いボートが黒い水に浮かんでいる。どうしたことかと目をこらす。と同時に、驚きが背筋を打った。黒全体がうごめいているではないか。その正体は何とサケの大群だったのだ。

 ≪巡る命 やがて川辺の緑に≫

 またあるときはこんな川に出合った。

 くるぶしほどの水深の川に、数千、いや数万匹というサケの群れが海から押し寄せてきた。身をよじらせ強引に急流をのぼる大群に水が蹴散らされ、川全体があたかも沸騰しているかのようだった。

 ふと見ると、川岸の一画に2頭のヒグマが座っている。サケを食べているようだが、他のクマのように川に入って獲物を捕まえている様子はない。ずっと同じ場所に座ったきり、いつまでたっても腰を上げようとしないのだ。

 その理由がわかったとき、思わず腹を抱えて笑ってしまった。川からはじき出されたサケが、そのクマたちの目の前に飛んでくるではないか。クマは労せずして獲物にありつく。好物である卵や皮だけを食べ終わるやいなや、また次のサケが飛んでくるのだ。回転ずしさながらの光景。延々とそれを繰り返したのであろう。クマたちが陣取る岸辺にはおびただしい数の赤身だけが横たわっていた。

 その死骸はカモメがついばみ、排泄(はいせつ)物に姿を変え川辺の緑を潤してゆく。巡る命。そのありようはさまざまである。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS

 ■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。1年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。TBS「情熱大陸」で紹介される。著書に「原野行」(クレヴィス)、「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー『アラスカ・フォトライブ』を開催。matsumotonorio.com

 【ガイド】

 松本紀生さんは、2014年12月18日(木)まで、東京都港区赤坂9の7の3「富士フイルムフォトサロンスペース2」で写真展「アラスカ原野行」を開催しています。20年にわたって撮影したアラスカの自然やオーロラ、クマやクジラなど野生動物の写真約40点を展示。午前10時~午後7時(12月18日は午後4時まで)、入場無料。12月13日午後2時からは松本さんのトークショーが開催されます。問い合わせと申し込みは(電)03・6271・3350フジフイルムスクエアまで。先着150人。

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