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心の中の電球が切れることはない 映画「サンバ」 オマール・シーさんインタビュー
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「もともと僕は人を笑わせる人間。僕の資質にちょっとだけ演技を加味すれば人物造けいができると考えていました」と若気の至りを吐露したオマール・シーさん=2014年10月25日、東京都港区(三尾郁恵撮影) 大ヒットしたフランス映画「最強のふたり」(エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督)で主演を務め、一躍、世界にその名をとどろかせたオマール・シー(36)。新作「サンバ」でも再び両監督とタッグを組み、どん底の生活環境から粘り腰で人生を好転させたばかりか、人助けにも一役買ってしまう、パリで暮らす心優しい移民の青年をしなやかに演じてみせた。
プロモーションで初来日したシーはSANKEI EXPRESSの取材に応じ、「サンバの笑顔は希望が映し出されたものだと思います。世の中にはサンバのようにつらい日々を送っている人もいるでしょう。それでも彼らは生きなければならない。そのためには(原動力として)希望がどうしても必要になってきますよね。サンバは今までに演じたことがないタイプの役柄だったので、役作りが難しかったですよ」と撮影を振り返った。
フランスに移住して10年。料理人に正式採用されたサンバ(シー)は、ビザのうっかり失効で、当局から国外退去を命じられてしまう。職を失った揚げ句、母国セネガルにいる母からは「仕送りはまだか」と催促され、街を歩けば常に逮捕の危険と隣り合わせ。人生最大のピンチに、移民を支援するボランティア団体で担当窓口となった元キャリアウーマンのアリス(シャルロット・ゲンズブール)、偽の身分証や日雇い労働を斡旋(あっせん)してくれる自称「ブラジル移民」のウィルソン(タハール・ラヒム)-といった面々と心を通わせ、少しずつ人生に明るい兆しが見え始めてきた矢先に…。
シーは「『最強のふたり』に出演した後、ようやく『自分を一人の俳優と考えてもいいんだ』と自信を持つことができました」と吐露した。何しろ東京国際映画祭で最優秀男優賞を手にするまで映画賞とは無縁の俳優人生だったのだ。
その後、多くの映画人が投票で受賞者を選ぶセザール賞で自分に主演男優賞を与えてくれたとなれば、シーはもっと胸を張っていいと思えてならなかった。「自信が持てなければ、サンバを演じようという気持ちも起きなかったでしょう。サンバのせりふやたたずまいには、何らかのニュアンスが伴います。繊細で複雑な心理描写が要求されるのです。また、サンバは自分の資質と大いに異なる人物でした。僕が逆境に置かれた場合、果たしてサンバのように笑っていられるだろうか、精神的にタフでいられるだろうか-と考えましたしね」
「最強のふたり」の大ヒットで生活環境が一変、フランス国内にとどまらず、プロモーションで世界を飛び回るようになった。ハリウッド進出を果たしたことで、苦手の英語を話す機会が格段に多くなり、英会話の勉強時間も増えていった。あまりの生活の激変ぶりに、オマールがアリスのように燃え尽きてしまわないかと、心配する声もちらほら出てきた。「コメディアンとして過去にそんな時期もありましたよ。
でも、アリスと決定的に違うのは、みんなに認められていることです。いくら忙しくても、アリスは何のために働いているのか分かっていない。今の僕は、忙しさのリズムがアリスと同じでも、心の中にある電球が切れてしまうことは決してありません」。次々と映画出演をこなしていくシーは至って冷静だ。
さて、映画のタイトル「サンバ」は主人公の名前から採ったものだが、主人公は「ダンスが大の苦手」ときていて、どこかおかしみを感じる。シー自身はダンスが得意であり、「最強のふたり」でも見事なダンスを披露しているほどだ。このインタビューの翌日、シーが出席した都内映画館での舞台あいさつは、まさに彼の独壇場。司会者からダンスを促されると、シーは「ダメよー、ダメダメ」と覚えたての日本語を連発して恥ずかしがりながらも、音楽がかかるとノリノリでステップを踏み、会場のファンを喜ばせた。12月26日からTOHOシネマズ シャンテほかで全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:三尾郁恵/SANKEI EXPRESS)
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