SankeiBiz for mobile

ステートメントとしての書き初め 大和田潔

 あけましておめでとうございます。2015年最初のコラムになります。昨年とは違う年が始まる感じがするため、年の初めはいつでも新鮮な気持ちになります。お正月明けのクリニックの診療の準備のために、窓を開けて換気をすると冷たい空気が流れ込んできます。

 「初明かり率いて赤子生まれ来し」という俳句を詠んだことがあります。いまは亡き宇咲冬男(うさき・ふゆお)先生に添削していただいたものです。新春の朝に、懇意にしている方から難産の末にお孫さんが生まれたという連絡をいただいたことをイメージしました。

 「すべての嬰児(みどりご)は、神がまだ人間に絶望してはいない というメッセージをたずさえて生れてくる」というインドの詩人ラビンドラナート・タゴールの言葉も思い返していました。

 患者さんに、年始に書き初めをお願いすることがありました。低血圧が原因と言われて体調の悪かった患者さんには、「早寝早起き」を書き初めして実行してもらいました。サーカディアンリズムの崩れと片頭痛が、体調不良の主因のように思えたからです。

 小児や10代の女性は血圧を計測すると90/60ミリHgぐらいの低血圧のことが良くあります。血圧を上昇させる薬である昇圧剤を内服しても体調が改善しない場合には、低血圧が体調不良の主因ではないことを意味しています。薬剤を止めて早寝早起きをがんばって実行に移した女性は、無事に進学されました。

 やりたい目標(ミッション)を書き出したり他者に公表したりすることは、ミッション・ステートメントと呼ばれます。

 新春にその年のミッション・ステートメントを行うことは大きな意味を持つことだと思っています。

 漠然と脳のなかにイメージとして描くよりも、書き出すと具体的な課題として認識することができます。すると解決に向けての道や、準備すべき事柄も次々と自然に明確になってきます。

 人間の命は有限です。迎えられるお正月の数にも限りがあります。適当に流してしまうのではなく全力で一日一日を生きていくために、ステートメントを書き初めしてみましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

ランキング