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洋食の王道と自慢の「ドビソース」 グリル小宝
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店1番の人気メニューであるオムライス(小650円、中950円、大1400円)。甘酸っぱいケチャップライスをしっかりと焼いた卵で巻かれた伝統的な味わい=2014年12月22日、京都市左京区(志儀駒貴撮影)
平安神宮のすぐそばにある老舗洋食店「グリル小宝」。京の観光名所の近くとあって、春と秋の観光シーズンにはオープン前から行列ができることでも有名だ。ガラス扉をからんと開ければデミグラスソースの香りがほんのりと漂い、食欲がかき立てられる。大きな窓からはさんさんと光が入り込む、明るい店内は、ゆったりとしたテーブル席の間隔がとられ、食事とともに会話もはずみそうだ。
オムライスにハンバーグ、ハヤシライス…。洋食に欠かせないものといえばデミグラスソースといえる。香り高いデミグラスソースは、小宝ではドビソースといわれている。つやつやとした輝きを持つソースは、お店の2階にしつらえたソース専用の厨房(ちゅうぼう)で作られている。
「掃除した牛すじにタマネギ、ニンジンなどを炒めてブイヨンを足して1週間煮込みます。24時間ずっと小さな火を入れて、その後は寝かしてこすんです。店に出すソースができあがるまで2週間もかかるんですよ」と、2代目店主の畠中正之さんはほがらかに答えてくれた。
大きな寸胴鍋に仕掛けられたドビソースの元はまだ1週間ほどだとか。小さな弱火にかけられている。1つの寸胴鍋から作るソースは、牛すじ40キロにタマネギ15キロ、ニンジン15キロが使われるという。
そんなこだわりのドビソースがとろりとかけられたオムライスが店一番の人気メニュー。黄金色に輝く卵焼きは、今はやりの半熟トロトロの卵ではなく、薄くしっかりと焼き上げられた昔ながらの正統派。
スプーンで薄焼き卵を割ってみれば、ケチャップライスにタマネギ、牛肉、豚バラ、グリーンピースが顔をのぞかせる。こだわりのドビソースを絡ませてぱくりとひと口。濃厚なデミグラスの味わいとほのかに甘いケチャップライスの妙に思わず笑みがこぼれる。
もちろん、洋食メニューの王道であるハンバーグは、炒めたタマネギに牛ひき肉、パン粉、卵、そして秘密の調味料ソースとともに、注文を受けてから成形し、220度のオーブンで10分間、ふっくらと焼き上げられる。添えているのはポテトサラダに千切りキャベツ、スパゲティ、洋辛子。ドビソースはもちろんたっぷりと。
また、生クリームと牛乳がベースのベシャメルソースのクリーミーなカニクリームコロッケも忘れてはならないメニューだろう。きつね色に揚げられたコロッケの断面は、きれいなホワイトクリーム色にカニの赤色がほんのりのぞく。
「ベシャメルソースの味わいを存分に味わっていただきたいので、味が足りないときは塩をぱらりと振りかけてみてください」と3代目にあたる畠中幸治さん。ズワイガニの身もたっぷり入っている。一口切って舌に乗せれば、とろけるような軽い仕上がりだ。
「小宝」という店名は、明治生まれの初代、畠中百馬さんが修業していた京都・祇園の洋食店の名店「たから船」から一字をいただいて名付けたそう。1961年のオープン以来54年。その味にひかれ、祖父母から孫へと3世代で通う人もいるほどだ。
客席から1階の厨房をのぞけば、忙しくきびきびと立ち働くスタッフの姿が垣間見える。一つ一つの料理はかなり大きめ。そのボリュームに驚かされること請け合いだ。
お客さんにはおなかいっぱいになって帰ってもらいたい、という初代の心遣いがいまも生きている。どこか懐かしく、そして優しくていねいに作られた味わい。そんな老舗の味は、時代を経て訪れる人たちの琴線に触れている。(文:木村郁子/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)
※価格はすべて税込みです。